体内に植え込んだ刺激装置から電流が流れ、リード線を伝って脊髄まで届き、痛みを緩和する(イラスト/今崎和広)
体内に植え込んだ刺激装置から電流が流れ、リード線を伝って脊髄まで届き、痛みを緩和する(イラスト/今崎和広)
排尿後、バルーン内の生理食塩水が徐々にカフに戻り、1~2分後には元のように尿道を締める(イラスト/今崎和広)
排尿後、バルーン内の生理食塩水が徐々にカフに戻り、1~2分後には元のように尿道を締める(イラスト/今崎和広)

 ロボット、人工知能などの新しい技術は、医療分野においても進化をもたらす。週刊朝日ムック「手術数でわかるいい病院2019」では、最新の医療機器について取材している。ここでは、「脊髄刺激療法」と「人工尿道括約筋」を紹介する。

*  *  *

■慢性疼痛/脊髄刺激療法

 難治性の慢性疼痛(とうつう)に対して、脊髄(せきずい)刺激療法という治療法がある。痛みは、脊髄を通って脳に届くことで「痛み」と認識される。この治療法は、痛みを伝える経路である脊髄に、体内に植え込んだ装置から微弱な電気を流すことで痛みを緩和する方法だ。電気刺激により、痛みが伝わりにくくなる。

 神経自体を破壊するものではないため、試験的に導入して効果がなければ、取り出して元の状態に戻すことができる。

 対象は、痛みが6カ月以上継続し、薬物療法で効果が得られにくい疼痛だ。病名では神経障害性疼痛や末梢血行障害で、導入例の多くは脊椎手術後の痛みだという。18年3月に発刊された「慢性疼痛治療ガイドライン」では、脊椎手術後と末梢血行障害の痛みに「強く推奨する」と位置づけられた。

 このガイドラインの作成委員長で、仙台ペインクリニックの伊達久医師はこう話す。

「脊髄刺激療法は1992年に保険適用になりましたが、当初は電極が4極と少なく、刺激も1種類だけでした。それがここ2~3年で、電極は最大16極に、刺激は3種類になり、MRI対応機種が出てきました。患者さんの操作も日本語対応になって容易になりました」

 刺激の種類が増え、痛みに合った刺激が選べるようになり鎮痛効果も向上。これまで装置を植え込むとMRI検査を受けられなかったが、最新機種はMRI検査を受けられるよう改良されている。ただ、国内で導入は年間約700例とまだ少ない。

「患者さんや専門以外の医師が知らないこと、知っていても古い機種の印象を持っていることが少ない理由です。もっとこの恩恵を受ける人が増えていいと思っています」(伊達医師)

次のページ
術後尿漏れの強い味方