スマートフォンと直接接続・操作できることで、通話の音声が人工内耳に入ってくるため、騒がしい場所などでもより明瞭に聞き取ることが可能になる(イラスト/今崎和広)
スマートフォンと直接接続・操作できることで、通話の音声が人工内耳に入ってくるため、騒がしい場所などでもより明瞭に聞き取ることが可能になる(イラスト/今崎和広)
Makoのロボティックアーム(左)とナビゲーションシステム(右)(画像提供:日本ストライカー)
Makoのロボティックアーム(左)とナビゲーションシステム(右)(画像提供:日本ストライカー)

 ロボット、人工知能などの新しい技術は、医療分野においても進化をもたらす。週刊朝日ムック「手術数でわかるいい病院2019」では、最新の医療機器について取材している。ここでは、「スマホ対応の人工内耳サウンドプロセッサ」と「人工股関節の手術支援ロボット」を紹介する。

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■人工内耳/スマホ対応サウンドプロセッサ

 補聴器を装用しても十分に聴力を回復することができない高度難聴の人に使用される人工内耳。手術によって皮下に植え込むインプラントや電極、頭に装着するサウンドプロセッサからなる。そのサウンドプロセッサに、スマートフォン(以下、スマホ)と直接接続できる新たな機種が発売された。

 人工内耳装用下では、駅や空港など騒がしい場所での会話がしにくく、とくに電話による通話が困難という課題があった。人間の耳は、無意識に「自分の聞きたいこと」にフォーカスして音を聞き分けるが、騒がしい場所では多くの音が混ざり合って聞きたい音を聞き分けることが困難になる。

 新しい機種は、スマホと接続することで、通話音声が直接人工内耳に送信されるため、よりクリアな聞き取りが可能になり、騒がしい場所でも快適に会話をすることができる。東京大学病院の山岨達也医師はこう話す。

「健聴者は聞きたい音と雑音が同じぐらいの大きさなら9割以上聞き取れますが、人工内耳の人は7割程度しか聞き取れません。雑音に邪魔されず通話音声だけが直接人工内耳に入ってくるのは極めて有効といえます」

 スマホを利用した音楽や動画の視聴なども同様に楽しむことができ、専用のアプリを利用すれば、聞こえの状態を確認したり、サウンドプロセッサを紛失した際に探したりすることも可能だ。

 いまやスマホは人々の生活に欠かせないツールとなり、高齢者でも使いこなす人は多い。

「人工内耳を入れる方はアクティブな方が多く、スマホを活用してより快適な聞こえを得られることが期待されます」(山岨医師)

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人工股関節の手術支援ロボット