林:見ごたえがありましたよ。最後はジーンときて、泣いちゃいましたよ。いい作品でした。ほかにも撮り終わった映画はあるんですか。

稲垣:『ばるぼら』という手塚治虫さん原作の漫画を、息子さんの眞さんが監督をして、二階堂ふみちゃんと演じました。この作品は、手塚作品の中でもカルト的というのかな。手塚作品といえば、僕は『鉄腕アトム』とか『火の鳥』とかのイメージがありますけど、あの人の作品、実はけっこうブラックなのがありますよね。

林:すんごいブラックなのも描いておられますよ。こんなもの描いていいのか、と思うようなものを。

稲垣:『奇子(あやこ)』とか『シュマリ』とか。

林:『きりひと讃歌』とか。近親相姦やら、いろいろすごいのを。

稲垣:『ばるぼら』はその中でもさらに刺激的で、僕は異常性欲者である作家の役をやったんですけど、相手がマネキンだったり、気づいたら犬だったり……。

林:わ、すごそう。でもおもしろそう。作家の役は、「ゴロウ・デラックス」で作家にいっぱい会ってるから、なんとなくイメージしやすいでしょう。

稲垣:そうですね。僕は耽美派作家みたいな役で、おもしろかったです。去年は、映画は「ばるぼら」と今度の「半世界」、そして舞台は林さんも見に来てくださったベートーベン(「NO.9─不滅の旋律─」)に、夏には京都で「FREE TIME, SHOW TIME『君の輝く夜に』」という舞台もやって、役者としてはこんなに充実した年はないぐらいでした。

(構成/本誌・松岡かすみ)

週刊朝日  2019年3月1日号より抜粋