ある二つ目さんの昇進披露の会のチラシに、「なぜこの師匠が?」というゲストの名前が載っていました。「そいつ、もともとA師匠の弟子で、破門になってB師匠に拾われたんです。自分の会のゲストに破門になった師匠を呼ぶってなかなかないですよねー」と後輩。

 いや、ゲストの依頼を快諾して出演してくれる元の師匠ってホントにカッコいい。それを許可する今の師匠も素敵です。無下に断られてもおかしくないものを、勇気を出して頼み、口上で現・師匠と旧・師匠に挟まれお祝いの言葉を頂く当人もなかなかのもの。

 落語家にとって本来あるべきではない『移籍』も、結果的に師弟がお互い幸せになるカタチがあるようです。

 それにしても頼んだわけでなく勝手にきた弟子を無償で育ててくれる師匠っていうのはホントにありがたい。弟子を持つようになって改めて思いましたよ。オイ!! ウチの弟子、わかってんのかよ!!

 ……いや、今のは独り言ですわ。

週刊朝日  2019年3月1日号

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春風亭一之輔

春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/落語家。1978年、千葉県生まれ。得意ネタは初天神、粗忽の釘、笠碁、欠伸指南など。趣味は程をわきまえた飲酒、映画・芝居鑑賞、徒歩による散策、喫茶店めぐり、洗濯。この連載をまとめたエッセー集『いちのすけのまくら』『まくらが来りて笛を吹く』『まくらの森の満開の下』(朝日新聞出版)が絶賛発売中。ぜひ!

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