そうした背景から、運動部活動には、全体主義的な傾向や暴力体質が特に色濃く残っています。日本の学校文化を「みんなちがって、みんないい」(金子みすゞ)という一人ひとりを大切にする方向に変えていかなければいけません。

 日本の学校教育は、全体主義的な方針と個性を尊重する方針との間のせめぎ合いを繰り返してきました。かつての詰め込み型教育への反省から1980年代以降、「ゆとり教育」にかじをきりましたが、その後、「学力低下」という批判を受け、2008年に“脱ゆとり”の学習指導要領に改訂され、学校現場に余裕がなくなってきています。学習規律の徹底を重視する学校も増え、個を抑える道徳教育も強化されようとしています。これは同調圧力を強め、いじめを起こしやすくする危険な流れです。のびのびと個性を尊重したゆとりある教育に戻すべきだと思う。

 いじめに遭ったら、学校には絶対に行かないこと。代わりに、朝から図書館でたくさん本を読んだらいい。学問は、言語の蓄積です。苦しい思いをして学校へ行くよりも勉強になるはずです。

週刊朝日  2019年3月1日号

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前川喜平

前川喜平

1955年、奈良県生まれ。東京大学法学部卒業後、79年、文部省(現・文部科学省)入省。文部大臣秘書官、初等中等教育局財務課長、官房長、初等中等教育局長、文部科学審議官を経て2016年、文部科学事務次官。17年、同省の天下り問題の責任をとって退官。現在は、自主夜間中学のスタッフとして活動する傍ら、執筆活動などを行う。

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