自筆証書遺言は、これまで全文手書きするルールだった。民法改正で1月13日から、財産目録についてはパソコンなどで印字し、署名・押印しても有効になった。20年7月10日からは全国の法務局で遺言を保管する制度も始まる。紛失の恐れがなくなり、自筆証書遺言を利用する人は増えそうだ。

Q8:遺言で気に入らない人への相続をゼロにできるの?

A:遺言があれば、それに基づいて遺産を分けるのがルールだ。だが、不公平な分け方を防ぐため、「遺留分」という仕組みがある。遺留分とは法定相続人の最低限の取り分のことで、基本的に法定相続分の2分の1に定められている。

 法定相続人が配偶者だけだと、遺産の2分の1が最低限の取り分になる。遺言で第三者に全て渡そうとしても、配偶者は2分の1に足りない分の権利を主張できる。もちろん配偶者が遺言に納得し権利を主張しなければ、第三者に全て渡すことも可能だ。

「遺言を残す際には、財産をなぜこのように分けたのか、自分の思いを『付言』として残しておくとよいでしょう。遺族が納得する理由が書いてあれば、もめるケースはぐっと少なくなるはずです」(佐藤税理士)

 特定の人に著しい問題(非行事実)があるときは、相続の対象から外す「相続廃除」という手段もある。生前に家庭裁判所に申し立てるか、遺言で意思表示し、裁判所に判断してもらう。(本誌・死後の手続き取材班)

週刊朝日  2019年3月1日号より抜粋