ちなみに、内閣府が設置した食品安全委員会によると、ワラビは「ヒトに対する発がん性を十分に証明する根拠は乏しいが、動物に対する発がん性を証明する十分な根拠はある」という香港食物環境衛生署食物安全センターの見解を紹介している。

 これによると、香港では
・ワラビを常食にしないこと
・有害化学物質の量を減らすために十分ゆでるか、蒸すこと(加熱調理)
・バランスのある食事を保つべき
と書かれている。要するに注意は必要だけれど禁止するほどではないよ、ということだ。妥当な見解だとぼくは思う。

 多くの食物がワラビと同様に、「発がん性を十分には証明はされていないけど、ないとはいえない」みたいなグレーゾーンに属している。だから、食べ過ぎないように気をつけなければならないし、逆に過度にヒステリックに怖がる必要もないのだ。

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岩田健太郎

岩田健太郎

岩田健太郎(いわた・けんたろう)/1971年、島根県生まれ。島根医科大学(現島根大学)卒業。神戸大学医学研究科感染治療学分野教授、神戸大学医学部附属病院感染症内科診療科長。沖縄、米国、中国などでの勤務を経て現職。専門は感染症など。微生物から派生して発酵、さらにはワインへ、というのはただの言い訳なワイン・ラバー。日本ソムリエ協会認定シニア・ワインエキスパート。共著にもやしもんと感染症屋の気になる菌辞典など

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