ありますね。まあ、でもなんかそういうベタベタしないけど、お互い思いやる、みたいなものは、剛とも慎吾とも3人それぞれもちろんあるんですけど、あんまり表には出しませんね。男同士って、そうなんじゃないかな。ずっと長い時間を経てつながった絆っていう意味では、僕らも映画と同じですね。3人って不思議な関係です。それぞれの関係性が、一対一の2人とも、グループとも違うし。本当に不思議。

──稲垣さんは、父親役を演じて、ご自身がお父さんになったらと考えたりしませんでしたか。

 自分がもし父親になったら、紘と同じで、あんなぶっきらぼうというか、わかっていない接し方になっちゃうような気がします。思春期の男の子って難しいですよね。僕は子供がいないからわかんないですけど、実際僕が父親になったら、理想像になれるかどうか、自信がないです。

──映画の中の息子さんは、最初は父親に対して反抗的でしたが、最終的には感謝しているように、尊敬しているように見えました。

 そうですね。そういうふうに着地した結末を迎えられる映画でよかったと思います。なんか人を驚かせるような映画でもないし、別に人を悲しませる映画でもないし、笑わせる映画でもない。なんかそこはやっぱり「染み渡る映画」。それって、すごい阪本順治監督の生き方というか、監督自身が表れている。非常に作家性が強い脚本でしたし、監督を見ているような仕上がりです。

──この作品に参加することを決めた理由は、何だったんでしょう。

 それはやっぱり今まで自分の行ったことのない世界を描いた作品だったし、阪本監督と初めて仕事ができるっていうことが大きいですね。俳優っていうのは常に自分のイメージを作っては壊すという作業だと思うし、そうありたいと思っているので。本当にまたとないチャンスでした。舞い降りてきたという感じでしたね。

──新しいスタートを切られて、初の単独主演映画になります。待ちわびていたファンの方にメッセージをお願いします。

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