イラスト/阿部結
イラスト/阿部結

 SNSで「売文で糊口をしのぐ大センセイ」と呼ばれるノンフィクション作家・山田清機さんの『週刊朝日』連載、『大センセイの大魂嘆(だいこんたん)!』。今回のテーマは「品がない人」。

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 インターネットの世界って、どうしてこうも品がないのだろう。

「晒す」と称して、赤の他人のプライバシーを暴き、「祭り」と称して、赤の他人によってたかって罵詈雑言を浴びせる。しかも、そうした蛮行を匿名でやる人が大勢いるのだ。何万人という単位でいるんである。

 つくづく「品がないなぁ」と思うのだが、よくよく考えてみればこうした行為、匿名ではないにせよ、昔からテレビや週刊誌もやってきたことである。

 ということは、匿名でやってるからことさら品がなく感じるのだろうか? どうもそうではない。匿名で他者を中傷するのは卑劣だとは思うけど、品のあるなしとは関係がない気がする。

 じゃあ、お前は「品」というものを分かっているのかと問われるだろう。実は以前、こんなことがあった。

 その日、大センセイはあるファイナンシャル・プランナー(FP)の方にインタビューをしたのだった。

 FP氏はすらっと背が高くてハンサムで、しかも育ちのいい方だ。しゃべり方も穏やかで、大センセイのようなガラッパチの馬の骨とは、見るからに人品骨柄が違う。

 インタビュー終了後、そのFPの方と担当編集者の三人で飲みに行くことになった。お店はちょっぴり高級な居酒屋。ちょうど秋刀魚の季節で、お勧めのメニューに「秋刀魚の塩焼き」があった。

 では、それを頼んでみようということになったのだが、出てきたのは丸々と太った30センチ近くもある見事な大秋刀魚である。

 大センセイ、お魚が大好きであるから、この大秋刀魚に夢中になった。秋刀魚はワタもおいしいから、丁寧に食べれば最後は頭と背骨だけになる。

 一心不乱に大秋刀魚を突き回し、後は頬の肉を残すのみというあたりまで食べ進んだとき、FP氏の声がしたのである。

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山田清機

山田清機

山田清機(やまだ・せいき)/ノンフィクション作家。1963年生まれ。早稲田大学卒業。鉄鋼メーカー、出版社勤務を経て独立。著書に『東京タクシードライバー』(第13回新潮ドキュメント賞候補)、『東京湾岸畸人伝』。SNSでは「売文で糊口をしのぐ大センセイ」と呼ばれている

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