末井昭(すえい・あきら)/1948年、岡山県生まれ。工員、キャバレーの看板描き、イラストレーターなどを経て、セルフ出版(現在の白夜書房)設立に参加。『自殺』で講談社エッセイ賞受賞。平成歌謡バンド・ペーソスのテナー・サックス担当 (撮影/植田真紗美)
末井昭(すえい・あきら)/1948年、岡山県生まれ。工員、キャバレーの看板描き、イラストレーターなどを経て、セルフ出版(現在の白夜書房)設立に参加。『自殺』で講談社エッセイ賞受賞。平成歌謡バンド・ペーソスのテナー・サックス担当 (撮影/植田真紗美)

 ムンクの「叫び」のポーズの人物が表紙を飾る『自殺会議』(朝日出版社 1680円※税抜)は、末井昭さんが自殺にかかわりのある人と対談し、考えたことを綴った本だ。末井さんが小学生のとき、母親は愛人とダイナマイト心中した。

【写真】末井さんが開いた「公開自殺会議」の様子

 そんな自身の半生と自殺について書いた前作の『自殺』は、講談社エッセイ賞を受賞し、今度は2冊目の自殺の本になる。

「もっと自殺のことを知るために、自殺に縁のある人から話を聞きたいと思ったのが、この本の始まりでした」

 前作を出した後、トークショーなどに出る機会が増えた。その会場で死を望む息子の母親に出会い、かける言葉に迷ったこともある。本書の対談では、自殺しようとしたハウス加賀谷さん、自殺した息子の霊に会った原一男さん、自殺したい人の電話を24時間受けている坂口恭平さん、患者の自殺を体験してきた向谷地生良(むかいやちいくよし)さんらと話している。

 末井さんはさらに探求し、自殺者の少ない徳島県の海部町(現・海陽町)と、自殺者の多い町を訪ねた。福井県の東尋坊では、崖に立つ人を止める、元警察官の茂幸雄さんに会った。

「茂さんは朝から酒を飲んでる人だけど、実際多くの人たちを助けていて、再出発まで面倒みている。そして『同情するなら同伴しろ』と、言葉だけの自殺防止活動に憤っている」

 一冊まるまる自殺の話なのに、笑いもあり、読後感は明るく解放感がある。

「自殺は深刻な問題だけど、クスッと笑ってもらえるのがいいと思って、不謹慎すれすれのところで書きたかったんです。登場してくれたのが命すれすれの場所にいる、優しいツワモノとでもいうような方々で、その人たちの言葉に圧倒されたし、僕の意識も変わりました。会議に参加している感じで読んで、生きるすべを汲み取ってもらえたら」

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