年間100回(東京約70回、大劇場約30回)ほど観劇するという都内のD子さん(58)は、チケット入手の名人だ。知人によると、「○○を観劇したいです」「○日の夜の部に行きたいです」などと頼んでおくと、どこからかチケットが手に入るというのだ。

「どの組の公演も見るけど、今は花と雪、月をよく見ます。もう長いですからね。ふだんから連絡を取り合っているファン仲間が数十人ほどいます」

 きっと、そのネットワークでチケットが舞い降りてくるのだろう。タカラヅカに費やすお金についてD子さんは多くを語らないが、しみじみ語った次の言葉が印象的だった。

「入れ込んでいた友達は、『マンションが買えたわ』と言っていました。10年以上応援していると、そのぐらいになっちゃうのよね」

 相撲などで有名な「タニマチ」と似た世界がタカラヅカにもあるのだ。

 今回、見てきた普通の大人女子はそこまではいかないだろうが、A子さんは、

「でも観劇回数一つとっても、財力がないと続きません。お金と時間、体力があってこそのタカラヅカファンです」

 生活に余裕があり、子育てを終えて自由になり、まだ体力もある。三つともイマドキの大人女子にピッタリだ。

 先のボン乃さんは、

「お金を使ってもそれに見合うだけの満足感が得られるから、のめりこんでしまう人が後を絶ちません。入れ込み始めるとブレーキが利かない大人女子が目立つのが気になりますが……」

 と警告するが、こういう大人女子に支えられているのがタカラヅカだ。

 タカラジェンヌが大人女子を魅了し、はまった大人女子がタカラヅカを支える。先の阪南大の森下専任講師はきっぱりとこう言った。

「タカラヅカのビジネスモデルは盤石です。どこにも死角は見当たりません」

(本誌・首藤由之)

週刊朝日  2019年2月22日号より抜粋

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首藤由之

首藤由之

ニュース週刊誌「AERA」編集委員。特定社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー(CFP🄬)。 リタイアメント・プランニングを中心に、年金など主に人生後半期のマネー関連の記事を執筆している。 著書に『「ねんきん定期便」活用法』『「貯まる人」「殖える人」が当たり前のようにやっている16のマネー 習慣』。

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