「小泉さんはまた4島一括を言い出して、『元の木阿弥(もくあみ)』になりました。外相に就いた田中真紀子さんにいたっては、日ロ関係の原点は田中・ブレジネフ会談だと言って、冷戦下で『領土問題は存在しない』と言われたソ連時代に時計の針を戻してしまいました」

「プーチン大統領は『日本はどうなっているんだ』と驚きました。私も国策捜査によってあっせん収賄罪などで逮捕され、パージされた。小泉内閣以後、第1次安倍、麻生、福田、民主党政権を含め、北方領土交渉は全く動きませんでした。いわゆる、日ロ“空白の10年”となったのです」

「三たび日ロ交渉が動き出すのは12年3月、プーチン氏が2度目の大統領に再選された時です。大統領選投票日の4日前、プーチン氏は北方領土問題について、『引き分け』、そして『始め!』という言葉を使いました。つまり、外交というものは引き分けがいいんだといって、解決に向けた発言をしたのです。ロシアの世論は8割近くが北方領土を1島も返す必要がないという意見です。選挙の投票直前に領土問題の話はマイナスにしかならない。私はそこにこそプーチン大統領の決意と勇気があると思っています。プーチン氏の強いリーダーシップに、日本政府もしっかりと応えなければなりません」

――日本政府も現在は「2島先行返還論」ではなく、「2島返還+α(プラス・アルファ)」の方針で臨んでいます。

「そう思います。歯舞、色丹は日本が主権を持つ。国後、択捉についてはロシアが主権を持つ。そこに国境線を画定する。『+α』とは、そのうえで国後、択捉には元島民はじめ日本人は自由に行き来できる。共同経済活動も進める。私はそれしかないと思っています。4島返還と言ったら、プーチン氏は交渉に応じません。いまのままゼロで終わります」
「元島民の気持ちの最大公約数は、自由に島に行ければいい。1島でも2島でも返してもらえるのなら返してほしい。それから、海を使わせてほしい。北方領土周辺の海域は、世界三大漁場の一つに数えられています。元島民は、すでに3分の2が亡くなられています。残された方々の平均年齢は84歳。もはや時間の猶予はありません。元島民の切実な願いをかなえるのが、いまを生きる政治家の責任だと思っています」

次のページ
在日米軍は北方領土に基地を置かない?