Bさんは事情をAさんに話しだした。もちろん、旦那さんは虐待のつもりでゲンコツをしていたわけでもないが、子供がそう感じてしまっていたら、それは暴力になるんだろうし、いろいろ言いたいこともあるけど、現実問題、家に帰ってこない選択をしている子供がいる。

 自分の子供にそこまで思わせてしまった現実を深く受け止めて反省しているのだと。

 そして、それから1カ月ほどたって、AさんのところにBさんから連絡が来て、子供と話し合って子供が戻ってきたこと、反省して、子供を育てていくこと、そして、勇気をもって自分に電話してくれたことのお礼を言ったらしい。

 もし、自分がAさんだったら、僕は連絡していただろうか? 皆さんだったら、どうしただろうか?

 大きなお世話という言葉がある。だけど、これだけ虐待の悲しすぎるニュースが出ていると、大きなお世話すぎる気持ちは大事なのかもしれない。仮にそれで友情関係が壊れるようなことがあっても、人の家庭に足を突っ込みすぎることも必要なのかもしれないと思った。

週刊朝日  2019年2月22日号

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鈴木おさむ

鈴木おさむ

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。

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