「偉くなって見返してやる」という気持ちで官僚になる人も結構います。総務省には地方公務員の子が多く、文部科学省には教師の子が多い。国の官僚からあれこれ言われてきた親のかたき討ち的なメンタリティーがあるのかもしれません。

 実際、古い中央集権的な考えから、地方公務員を見下している官僚もいまだにいますね。私は文科省から地方に出向したことがありますが、国から出張者が来る時の地方公務員の気の使いようは、ちょっと気の毒なぐらいでした。本来、地方自治は、中央の言うことに右へ倣えで従うのではなく、自分の地域に何が必要かを考えて、自負と自信を持って行うべきもの。文科省が行う全国学力テストも、「参加しない」と判断する市町村があっていいんです。

 私は国家公務員のキャリア・ノンキャリア(総合職・一般職)の区別はなくしていいと思う。仕事もでき、人間的に立派な一般職の人はたくさんいます。役所に入る時点で身分格差を固定化するなんて、おかしな話。

「次官にまでなった人」とありますが、次官になるかどうかは時の運。本当に立派な人でも次官にならない人はたくさんいるし、逆に今の各省の次官を見渡すと、必ずしも信頼できない人が多い。今、各省庁の高級官僚と言われる人たちには、自ら進んで政権に忖度する人が多くなっていますからね。人間として信頼できる人にこそ偉くなってほしいものです。

週刊朝日  2019年2月22日号

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前川喜平

前川喜平

1955年、奈良県生まれ。東京大学法学部卒業後、79年、文部省(現・文部科学省)入省。文部大臣秘書官、初等中等教育局財務課長、官房長、初等中等教育局長、文部科学審議官を経て2016年、文部科学事務次官。17年、同省の天下り問題の責任をとって退官。現在は、自主夜間中学のスタッフとして活動する傍ら、執筆活動などを行う。

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