白血病は、いわば「血液のがん」。池江選手のように若い世代で罹患する人も多いが、15歳未満の子どもがかかる小児がんで見た場合、最も多いのがこの白血病だ。骨髄の未熟な造血幹細胞ががん化し、無制限に増える疾患。正常な血液が作れなくなり、貧血や発熱などの症状が現れる。だが、近年、治療技術や薬剤は格段に進歩している。

<しっかり治療をすれば完治する病気でもあります>

 池江選手がツイッターで力強くそうつづったように、かつて「不治の病」とされた白血病は、移植技術などの進歩で、いまや「治る病気」になった。ここでは、白血病の治療について解説する。

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 血液がんは、血液の材料になる造血幹細胞や、白血球などの血球成分が悪性化する病気だ。さまざまな種類があるが、白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫の「3大血液がん」が大半を占めている。

 白血病は、血液の製造工場にあたる骨髄ががん化した白血病細胞に侵される。放射線被ばくやウイルス感染などによる発症もあるが、多くは原因がわかっていない。正常な血液が作れなくなるため、貧血、白血球減少による発熱などの感染症状、出血などの症状が表れる。

 発症者数は年間約1万1千人で、ほかのがんに比べると少ない。小児期や青年期にかかるがんのトップだが、北海道大学病院血液内科教授の豊嶋崇徳医師は「50代以降の発症も多い」と話す。

 がん化した血球成分の種類によって大きく「骨髄性」と「リンパ性」に分かれ、また進行の速さなどにより「急性」と「慢性」に分類される。日本の成人に最も多いのは急性骨髄性白血病、次いで慢性骨髄性白血病だ。

「かつて白血病は不治の病というイメージがありましたが、今は4割以上が根治できるようになりました」(豊嶋医師)

 血液がんは全身病で、早期でも固形がんのように手術で切り取れないため、抗がん剤を使った薬物治療が中心になる。

 通常、急性白血病の薬物治療は、まず強い抗がん剤を7~10日間投与して血液中の白血病細胞を一気に殺し「寛解(骨髄中の白血病細胞が骨髄全体の5%未満まで減った状態)」に持ち込む。正常な血球成分が回復したら、わずかに残る白血病細胞を一網打尽にすべく、再び抗がん剤を投与する(地固め療法)。その後は弱めの抗がん剤を1~2年投与する維持療法で、根治を目指す。

 なお抗がん剤は正常な細胞も傷つけるため、嘔吐や脱毛、発熱といった副作用は避けられない。そこで副作用を抑えるための抗菌剤や抗ウイルス剤の投与、輸血なども並行する。一方、慢性骨髄性白血病は、イマチニブなどの効果が高い分子標的薬が開発され、5年生存率が95%に向上している。

(文/谷わこ、今田 俊)

※週刊朝日ムック「手術数でわかる いい病院2015」から。医師の所属は当時