認知症で一番多いアルツハイマー型認知症では、アミロイドβというゴミのようなタンパクが神経細胞の周りに異常に蓄積して老人斑をつくります。その影響でタウタンパクが神経細胞の中に大量に溜まり、細胞が変性して神経の機能が失われます。

 ですから、まずはアミロイドβを蓄積させないことが重要だとして、アミロイドβを標的にした治療薬の開発が進められてきました。しかし、あまりいい結果は得られていません。最近では、アミロイドβよりも、むしろタウタンパクに注目し、神経細胞の変性や細胞死を阻止する治療薬の研究に重点が移ってきているようです。

 S‐アリルシステインが注目されるのは、アミロイドβの蓄積を抑えるだけでなく、タウタンパクにも働きかけて、神経細胞の変性を阻止する働きがあると見られているからです。さらには、海馬の神経細胞の樹状突起分岐点を増やし、細胞の再生を助ける働きもあるというのです。アルツハイマー型認知症のあらゆる段階での効果が期待されているのです。

 実は、アミロイドβの蓄積は認知症発症の20年前から始まると言われています。臭いなんて言っていられません。いますぐにニンニクを食べ始めるようにしましょう(笑)。

週刊朝日  2019年2月15日号

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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