表情が明るい阪神・藤浪晋太郎 (c)朝日新聞社
表情が明るい阪神・藤浪晋太郎 (c)朝日新聞社
阪神前監督の金本知憲前監督 (c)朝日新聞社
阪神前監督の金本知憲前監督 (c)朝日新聞社

 阪神・藤浪晋太郎の表情が明るい。春季キャンプでは復活に向けてモデルチェンジを図った。大きく振りかぶるワインドアップは新人の13年以来6年ぶり。「順調に来ている」と手応えを口にするように、キャッチャーミットを突き破るような剛速球がうなりを上げていた。ブルペンを視察した他球団のスコアラーも「良い時の藤浪に戻りつつある。腕をきっちり振れるようになれば他の投手とはモノが違う。要注意ですね」と警戒を口にしていた。

【藤波不振の元凶はこの人だった?】

 つい数年前までは、大谷翔平と並ぶ才能として将来を嘱望されていた。高卒プロ1年目の13年に10勝をマーク。14年に11勝、15年に14勝と球界を代表するエースへの階段を順調に駆け上がっていった。暗転したのは金本知憲前監督が就任した16年からだった。開幕から3戦3勝と順調な滑り出しだったが、その後は立ち上がりに崩れるマウンドが多く、白星から見放された。その中で「事件」が起きたのが7月8日の広島戦(甲子園)だった。3回までに5失点と崩れたが、金本監督は8回まで交代させず161球を投げさせた。「四球連発で野手のリズムも悪いし、救援の投手たちにも迷惑が掛かる。金本監督のメッセージを受け止めた方がいい」と語る識者もいたが、「あれではさらし者。藤浪は粗削りな投球だけど、性格は繊細です。考えすぎない方がいいけど。心配です」と球団関係者は心配顔だった。

 悪い予感は当たった。体と心のバランスが失われ、課題の制球難を気にするばかり躍動感を失った。右打者にすっぽ抜ける死球で顔面蒼白になったことは一度や二度ではない。16年は7勝、17年は3勝とかつてのエース右腕はファーム暮らしが長くなった。キャッチボールでも暴投を投げる姿に、イップス説も流れた。18年もわずか5勝のみ。金本前監督の期待は大きかったが、輝きを失った3年間だった。
 
 不調の要因は精神的な部分が大きいが、矢野燿大監督の下で復活する可能性は十分にある。藤浪は昨年に2軍落ちした際、矢野監督に掛けられた言葉が心に残っているという。「もっと野球を楽しんだらどうや。高校野球の時、楽しんで投げているお前の姿。ああいう顔が見たい」。指揮官は現役時代に名捕手として多くの投手を一本立ちさせてきた。FAオリックスから西勇輝、昨季13勝マークした元中日のオネルキ・ガルシアを獲得して先発の層は厚くなったが、真のエースになれる素材は藤浪だ。完全復活すれば優勝争いに食い込む可能性は十分にある。(本誌取材班)

※週刊朝日オンライン限定記事