被害者はどうして会ったこともない相手にお金を払ってしまうのか。国際ロマンス詐欺撲滅協会代表で作家の新川てるえさんに聞いた。

「この詐欺は、時間をかけて信頼関係を巧みに築き上げていきます。相手を信頼させるために、身分証明書やパスポート、所有している家を見せてくるパターンもあります。もちろん偽装ですが、『君だけに見せる』と言って、自身のことをいろいろと明かしていくのです。そして、相手に冷静な判断をさせないために、多ければ1日に100通近いやり取りを重ね、考える時間を奪うのです」

 日本人男性が言いそうにもない「愛している」だの「美しい」だの、愛情表現を毎日ささやかれると、感情移入がグッと深まるようだ。

「被害者心理としては、100%信じているわけではないけれども、突然、戦地でケガをしたなどの命に関わるトラブルに相手が巻き込まれたと知ると、ここで私が助けないと人でなしのような気持ちに陥るのです。相手から『必ず返すから立て替えて』と迫られたら、これまで築いてきた信頼関係の元に、お金を払ってしまうのです」

 巧みに相手の心理に付け込んでくる詐欺だが、かつてはアメリカで60歳以上の被害者が多かったという。すでに検挙や啓発が進んだアメリカから、最近ではアジア圏でも横行するようになった。

「詐欺グループは、数打てば当たるといった考えで、SNSでメッセージを送り、返信が返ってきた相手をターゲットにします。日本ですと、時間とお金に余裕のある40歳以上の方から被害相談をよく受けます。SNS初心者や、英語を学べたらいいと、軽い気持ちで始まる方が多いです」

 新川さんによると、口座凍結や救済処置でお金が返ってくるケースもある。冷静な判断が肝要だ。(本誌・岩下明日香/今西憲之)

週刊朝日  2019年2月15日号に加筆

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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