東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝
東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝
巨人岡本のように一気に活躍する選手が現れるか (c)朝日新聞社
巨人岡本のように一気に活躍する選手が現れるか (c)朝日新聞社

 西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、ブレークした巨人岡本に続く選手についてこう語る。

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 中日は沖縄・北谷で行う合同自主トレ期間中の1月末に、投手が打者相手のフリー打撃に登板した。そしてキャンプ初日となった2月1日にはロッテが12球団最速で紅白戦を行った。2000年以降、実戦時期がどんどん早まっているが、その傾向にさらに拍車がかかっている。

 オフの期間、完全に体を休めると、元の状態に戻すのに時間がかかる。年齢が進めば進むほど、元の状態に戻りにくい。逆に、若手にとっては、自習とも言えるオフの期間中に、どれだけ意識を高くしながら取り組んだかで、キャンプ中のアピールの密度が変わる。若手もベテランも、しっかり体ができている状態で2月1日を迎えているという意味では、私が現役の頃とは大きな差がある。

 野球のレベルが急速に上がり、適当にやっていてはすぐに追い抜かれる。何度も指摘してきたが、レギュラー固定の「9人野球」の時代は終わった。コンディションの落ちた人間をずっと使い続けるよりも、状態の良い選手を優先起用したほうが、勝率は上がる時代になった。だから、首脳陣も若手を含めたチーム全体の底上げへ、競争を促す実戦を早期導入する。これも時代の変化かなと感じる。

 ただね。ピークを過ぎたベテランは同じことをやっては、シーズンに入る前に疲れ果ててしまう。体に染みこませるように少しずつ負荷をかけないといけない。開幕に合わせていいベテランと、レベルアップや競争を強いられる若手の二分化は顕著になるだろうね。一番大変なのは、中堅どころ。若手と一緒になってやれば、ばててしまう。体と対話しながらキャンプを乗り切ってもらいたい。

 若手にとっては、実戦の機会が増えるのは、チャンスが増すということである。おそらく3月中旬には、ベテランや主力の状態が上がり、オープン戦の出場機会は減るだろうから、そこまでがポイント。ただ、結果を欲しがれば、形は崩れる。今年自分がどういう形を目指すのか。1年間やり通そうと思ったことは何か。そこだけはぶれてはいけない。例えば、長距離打者は、安打が欲しくて、当てにいくような打撃を繰り返しても、首脳陣は評価してくれない。

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東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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