「それに宿題が出るんだよ。パソコンにデータで送られてくるってさ」。マジか……。自分が子供の頃そんなことあったかな。確かに『学級閉鎖』の最中に校庭にドッジボールをしに行ったら、先生に見つかって怒られた気がするが、宿題なんか出たか? カリキュラムをこなさなきゃいけないからそれも当然かもしれないが、しかし生徒に在宅確認の電話って……。生徒も戦々恐々だが、先生も大変だ。

『学級閉鎖』ってもっと楽しいものだと思ってたのに、今はそうでもないらしい。「やることねーなー」ってけっこう嬉しいのになあ。

 平日の昼間に家で長男と二人。とりあえずこんな状況は珍しい。

「じゃ、ま、昼飯は外で食うか。大丈夫大丈夫。そんなすぐに電話はこないだろうよ」

 親子で近所の寿司屋でランチにぎり1500円也。店のおばさんが「おやすみ?」と聞けば「今日から学級閉鎖です」と応える長男。おばさんは「あら、いいわねー」と返す。よかないけどそう思うよね、おばさん?

 帰宅してパソコンを覗くと、半端じゃない量の宿題。可哀想なので「片付いたらまた寿司行くか?」と言ったら「ごちになります」だと。子供もツラいね。

週刊朝日  2019年2月15日号

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春風亭一之輔

春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/落語家。1978年、千葉県生まれ。得意ネタは初天神、粗忽の釘、笠碁、欠伸指南など。趣味は程をわきまえた飲酒、映画・芝居鑑賞、徒歩による散策、喫茶店めぐり、洗濯。この連載をまとめたエッセー集『いちのすけのまくら』『まくらが来りて笛を吹く』『まくらの森の満開の下』(朝日新聞出版)が絶賛発売中。ぜひ!

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