同作の制作中にマルチ・ミュージシャンのグレッグ・カースティンと意気投合。彼と2人で、ジャズやラテンの要素を採り入れたザ・バード・アンド・ザ・ビーを結成する。グレッグはベック、アデル、フー・ファイターズのほか、ポール・マッカートニーの『エジプト・ステーション』などの制作を手がけてきた話題のプロデューサーでもある。

 ザ・バード・アンド・ザ・ビーの活動の傍ら、イナラ・ジョージ・ウィズ・ヴァン・ダイク・パークス名義として2作目のソロ作『AN INVITATION』(08年)を発表。ヴァンが編曲した優雅なオーケストレーションを配した作品で、マニアックなファンの間では話題になった。09年には3作目『Accidental Experimental』を配信限定で出した。

 4作目の本作『ディアレスト・エヴリバディ』は昨年4月、2枚組アナログ盤と配信限定で発売。このほど、日本に限りCD化されることになった。

 本作のプロデューサーはソロ・デビュー作も手がけたマイク・アンドリュース。過去3作のうち2作では、イナラのギターをフィーチャーし、多彩なリズム・アレンジで、エレクトロの要素を採り入れたポップ・サウンドをバックにしてきた。今回もエレクトロの音を踏襲しつつ、バンド編成によるストレートなロックやフォーク・ロック、ストリングスやホーンなどを活用している。

 基本的にはイナラの自作曲、ヴォーカルとコーラスに焦点が絞られている。アカペラ的な曲もあるなど、アコースティックでシンプルなスタイルによる。

 イナラ自身は“オーガニックで、正直で、エモーショナルなものを目指した”と語る。曲を作るうえで複雑な構成への興味よりも簡素な曲を目指すようになったという。彼女の詞は内面的でストーリー・テリング的な内容が多い。今回はよりパーソナルな面も残しつつ、夫や子ども、友人など“誰かを失った人のために、または失った人への一種のオマージュ”として書いたという。

次のページ
アルバムのテーマは“喪失”