しかも今回この被害女性が“釣られて”しまった広告には、マツコ・デラックスさんの名前と写真が使用されており、彼女曰く「マツコさんの名前を見て信じてしまった」とのこと。言われてみれば『マツコ絶賛!』とか『マツコの番組で紹介! 話題沸騰!』といった太鼓判的な煽りタイトルを昨年ぐらいから頻繁に目にします。時には『あのマ○コが! 話題沸騰!』などと、伏せ字の部分に間違った文字を当てはめてしまうと大変なことになってしまうようなものも。それにしても不思議です。現在の日本においてマツコさんの経済効果・広告効果が強大だという話は目にし耳にしますが、本人はもちろんのこと昔からよく知る私のような周囲の人間にとっては、恐ろしいほどその自覚や実感がありません。それが今や胡散臭いビジネスに巻き込まれ、『クロ現』などという“まっとう”な番組で取り上げられてしまっている。フェイク広告に無断で使用されたマツコさんの写真には黒い目線が施されていました。
マツコさんや私にとって、この10年近く自分たちがテレビに出たり自分の言葉を発するなどといった現実は、どこか「勝手気ままにごっこ遊びをして生きてきた延長線上で、たまたま拾ってもらっている」という意識の下、それを労働と捉えてやってきている感がありましたが、此度の『クロ現・マツコ黒目線』は、芸能(虚構)とは違う現実社会にマツコ・デラックスという人間が確実に『存在』しているという事実を、ある意味初めて実感させられた出来事でした。
それにしても不思議です。マツコさんの「痩せる!」に何の信頼性があるのか。その昔「最近浮腫(むく)みが取れなくてさ……」と言ったら、10秒ぐらい黙って「ねえ、浮腫みって何?」と言い放った人ですよ。「お腹空かない?」と訊いた瞬間、「いまだかつてお腹なんか空いたことない!」とブチ切れた人ですよ。
※週刊朝日 2019年2月8日号