すると、「そんなことを言いだしたら、安倍内閣が大揺れになる。だから、そうならないために、沈黙しているのだ」と答えた。つまり組織防衛のためだというわけだ。

 だが、私が信頼している最高幹部の一人にそのことを言うと、「実は困ったことなのだ」と率直に語った。

 議員たちは安倍首相のご機嫌をとることばかり考えていて、ご機嫌を損なうことを恐れている。だから「問題あり」だとは言えず、この国のためにはこうすべき、こうしてはならないと、思い切ったことが言えなくなっているのだという。

 要するに、自分の身を守るために、組織防衛という言葉を使っているということだ。

 東芝の中堅以上の社員たちも、厚生労働省の官僚たちにも同じことがいえるのだろう。厚生労働省の問題でいえば、問題の徹底解明を求め、責任を糾明すべき担当大臣などの政府関係者が、まるでひとごとのような答弁をしている。

 こうした姿勢は、森友・加計疑惑のときから顕著になった。財務省が決裁文書を改ざんして、そのことが露呈したとき、当然責任を取って辞任すべき財務大臣が、個人的な仕業であって財務省には責任がない、と言い、なぜかそれがまかり通ってしまった。だから、厚生労働大臣も自分自身の責任は感じていないようだ。国民がもっと厳しくならなくては!

週刊朝日  2019年2月15日号

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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