夫婦げんかもするが、「この年齢になると、言いたいことを言っておしまい。翌日はまた、お弁当を作ってくれます」(ミツヨさん)。

 この夫婦が楽しく暮らせているのは、ノブユキさんが妻への感謝の気持ちを言葉と行動で表現しているからだろう。

「長年夫婦でいたんだから、言わなくてもわかるだろう」と言う男性も多い。しかし、はっきり言わないと、思いは伝わらない。筆者が高齢者の相談を受ける際、女性たちから「夫が何を考えているのかさっぱりわからない」と何度聞かされたことか。

 口に出し、それを機に話し合う。その繰り返しが信頼を深めていく。長年連れ添った夫婦でも意見の食い違いは当然ある。対立したときにも不機嫌にならず、「ああ、そういう考えもあるのか」と耳を傾けると、会話がいい方向に転がっていく。お互いを尊重し、穏やかな話し合いで物事を決めていく癖をつけると、いつまでも仲良し夫婦でいられるはずだ。
(文中カタカナ名は仮名)

週刊朝日  2019年2月8日号より抜粋