※写真はイメージです (撮影/写真部・馬場岳人)
※写真はイメージです (撮影/写真部・馬場岳人)
夫、妻それぞれの意識も変わってきている(週刊朝日 2019年2月8日号より)
夫、妻それぞれの意識も変わってきている(週刊朝日 2019年2月8日号より)

 熟年離婚を選択する夫婦と老後も仲のいい夫婦は何が違うのか。事例をもとに夫婦円満のコツを考えてみよう。マネーセラピストの安田まゆみ氏がレポートする。

【夫、妻それぞれの意識も変わってきている。理想の夫婦像とは?】

*  *  *

 首都圏に暮らすノブユキさん(69)は金融系の会社を定年退職後、投資コンサルタントとしてフリーで仕事を続けている。11歳下の妻ミツヨさんはやはり金融関係の現役社員だ。

 ノブユキさんは自宅で仕事をすることが多く、午前中に外出しない日は必ず、ミツヨさんの弁当を作る。掃除も洗濯も一手に引き受けている。

「そうでもしないと、私に捨てられちゃうと思ってるんじゃないですか」

 ミツヨさんはそう言って笑った。

 じつはノブユキさんはミツヨさんに負い目がある。現役の会社員時代、モーレツに働き、出張や接待などで自宅を空けることが多かった。まるで必然であるかのように、家事全般と子育てを妻に任せきりにしていた。同業の妻も実務の能力が高かったが、家庭を優先せざるをえなかった。

 筆者は多くの人の相談を受けてきた経験上、「家事と子育てをワンオペで妻に任せたツケは絶対にチャラにできない」と断言できる。でも、そのツケを返そうとするのとしないのとでは、老後の夫婦関係が大きく違ってくる。

 ノブユキさんは本気だ。

 弁当の中身は、作り置きの常備菜や前日のおかずの残りものが中心だが、「私の健康に気を使ってくれているのがよくわかるお弁当」(ミツヨさん)という。

 もともと料理は好きだった。「退職したら、妻への感謝として、できる限りおいしい料理を作る。家事もやる」と誓っていたそうだ。退職して9年間、実際にそれを続けている。

「相変わらず、洗濯物をたたむの、下手ですけどね」

 ミツヨさんはそう突き放すが、夫の気持ちを素直に受け止めているようだ。

 子どもたちは独立し、今は2人暮らし。月に一度はデートに出かける。料理好きのノブユキさんが評判の店を探し、2人で味を確かめに行く。ミツヨさんもグルメ情報を持ち寄り、食べながら「次はどこにしようか」と、次の計画を練る。

次のページ