普段接している高齢の身内に性欲があることは、その周囲の人間(たとえば子や孫)からしてみれば、あまり考えたくないことかもしれない。「しかしこれからの時代は『いくつになっても人間には性的欲求は存在する』ということを受け入れていくことが大切です。年をとっても身体は元気、心も元気であれば、性欲を持ち続ける人は一生持ち続けて当然。そんなふうに考えていれば、不意の出来事に対しても不要な驚きや抵抗感を持たずに対応できるのではないでしょうか」(前出・坂爪さん)

 性は何も種の保存のためだけにあるのではない。「男性であること」「女性であること」を忘れずに生きることは、生きる張り合いにもつながるのだ。

「高齢者の『性』に向き合うことは、高齢者の『生』とも向き合うことなのです」

 長寿化と共に、今まで何となく隠してきたこと、押し殺してきたこととも対峙するときがきたようだ。

 高齢になったら性とは無縁に“清らかに生きる”。そんな時代は確実に変容してきているのである。(赤根千鶴子)

週刊朝日  2019年2月8日号