有元葉子(ありもと・ようこ)/素材の味を生かしたシンプルな調理法と、センスあふれる潔い料理にファンが多い。オリジナルの台所道具「ラバーゼ」シリーズの開発も手掛ける。東京・玉川田園調布で料理教室「cooking class」を主宰。1996年、イタリア・ウンブリア州にある元修道院の建物を購入し、日本とイタリアを行き来しながらの生活をスタート。2012年、グルマン世界料理本大賞・食の紀行部門でグランプリ受賞。近著に『レシピを見ないで作れるようになりましょう。』『りんご、レモン、いちご、栗のお菓子と料理』など。 (撮影/写真部・加藤夏子)
有元葉子(ありもと・ようこ)/素材の味を生かしたシンプルな調理法と、センスあふれる潔い料理にファンが多い。オリジナルの台所道具「ラバーゼ」シリーズの開発も手掛ける。東京・玉川田園調布で料理教室「cooking class」を主宰。1996年、イタリア・ウンブリア州にある元修道院の建物を購入し、日本とイタリアを行き来しながらの生活をスタート。2012年、グルマン世界料理本大賞・食の紀行部門でグランプリ受賞。近著に『レシピを見ないで作れるようになりましょう。』『りんご、レモン、いちご、栗のお菓子と料理』など。 (撮影/写真部・加藤夏子)
有元葉子さん(右)と林真理子さん (撮影/写真部・加藤夏子)
有元葉子さん(右)と林真理子さん (撮影/写真部・加藤夏子)

 幅広い世代から人気を集める料理研究家の有元葉子さん。おいしく健康的なレシピの提案はもとより、洗練されたライフスタイルにファンも多数います。作家の林真理子さんが料理についてうかがいました。

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*  *  *

林:有元さんの『レシピを見ないで作れるようになりましょう。』という本、今、すごく評判になっていますね。私も読ませていただきましたけど、レシピが出てなくても、すごくわかりやすかったです。

有元:テレビの影響もあると思うけれど、ハウツーばっかりに追われて、「自分の感覚はどこに行っちゃったの?」と思ってたんです。「レシピを見てもいいけど、甘い、からいとか、火が強い、弱いとか、そのへんは自分で考えたらどうなの?」と。私は、「自分の感覚を信じてほしい」っていつも言っていて、それが本になったんです。

林:でも、生まれつき料理のセンスのない人っていますよね。

有元:料理ってセンスとはちょっと違うような気がします。「おいしいものを食べたい」という気持ちだと思う。やってるうちに、自分で「おいしいな」と思えるものがつくられていくと思います。

林:私なんかそういう気持ちがいちばん強いんですけど、なぜか「まずい」って言われるんですよ。

有元:それぞれみんなテイストが違うと思うんですね。それでいいと思うの。お料理やってるうちにだんだん自分の世界が自然にできてくると思うのよ。人のまねをする必要はないし、自分がいいなと思った方向に行けばいいんです。

林:そうなんですけど……。私、料理はそんなに嫌いじゃないんです。

有元:うん、だと思う。

林:でも、たとえばトンカツを揚げても、揚げすぎか、中まで火が通ってないかのどっちかなんですよ。

有元:肉が分厚ければ、ゆっくり時間をかければいいのよ。時間をかけるんだったら、ちょっと低温にする。そういうことなのよ。

林:いつも豚汁がおいしくできないんですけど、せっかちで、早く終えようと思って、ゆっくり煮ないからなんですね。

有元:ゆっくり煮ると、それぞれの具材からいい味が出るんです。お風呂と同じよ。ちょっとぬるめのお風呂にゆっくり入ると、芯から温まるでしょ。お鍋もじっくりじっくり温めるとか、ゆっくり煮出すとか、それでうまみが出て味がまとまるの。

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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