私が東大に入ってからのこと。みんなでファミレスに集まり試験の勉強をしているとき、私が「もう5時間もやったのか」と思っていたら、周囲が「まだ5時間しかやってないんだね」と言いだしたことがあります。もし1人だったら、5時間もやったら相当な達成感のまま終わっていたでしょう。しかし周りの人たちが「5時間程度、集中するのは簡単なこと」なんて思うような環境にいると、自分も「そうかもしれない」という気分になってきます。

■塾に通って、周囲の「集中」に自分を合わせる

 ただ、環境を変えるために学校を転校する、とまでするのは難しいでしょう。ならば、塾に入れてみるのも良いかもしれません。私の妹は高校受験のとき、勉強を教わるためではなく、自習室でみんなが勉強している中に交ざるためだけに、予備校に通っていました。周囲が「集中して当然」の中にいることで、自分も同じ気分に高められます。夫も、学校だけではなく「100%東大に受かる」という看板を掲げた塾に通っていました。そこでは、勉強もやりますが、主に「心構え」を教えられたそうです。そう考えるとやはり、「自分はできるはず」と思うことがいかに大切かがわかります。

 もちろん、環境だけでなく、情報でアシストすることも有効です。東大受験を描いた『ドラゴン桜』という有名な漫画があり、この中で「東大は簡単だ」と言い切っています。だからこそ、この漫画を読むことで「自分だってできるかもしれない」という気持ちが出てきます。もちろん漫画だけでなく、伝記でも構いません。何かに向かってコツコツ成長していくストーリーは、子どもに勇気をくれます。

 親が「勉強しなさい」と、応援もなにもせず単純に自分の要求だけをつきつけても、それはただのワガママにすぎず、子どもの反発心しか生まれません。それよりも、親がちょっと工夫して、子どもに「やれて当たり前」という環境を準備してあげることが大切なのです。子どものモチベーションは、育ってきた環境で決まるといっても過言ではないのですから。

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杉山奈津子

杉山奈津子

杉山奈津子(すぎやま・なつこ) 1982年、静岡県生まれ。東京大学薬学部卒業後、うつによりしばらく実家で休養。厚生労働省管轄医療財団勤務を経て、現在、講演・執筆など医療の啓発活動に努める。1児の母。著書に『偏差値29から東大に合格した私の超独学勉強法』『偏差値29でも東大に合格できた! 「捨てる」記憶術』『「うつ」と上手につきあう本 少しずつ、ゆっくりと元気になるヒント』など。ツイッターのアカウントは@suginat

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