橋下:それは政治批評の力不足ですよ。それと沖縄の喧嘩のやり方の迫力不足。今度の住民投票で辺野古移設の賛否を問うなんてしょうもないことはダメ。それは玉城(デニー)さんが知事選で勝って既に移設反対の意思が示されたわけですから。僕はいっそのこと「沖縄の独立」「中国の公船を沖縄の港に入れる」「沖縄に中国の拠点を作る」ことを問う住民投票にしたらいいと思う。これくらいやってはじめて政府や本土の人間もビビるでしょ。メディアや政治批評が応援してあげないと、玉城さんはそんな喧嘩できないですよ。

田原:いいアイデアだね。僕は小渕政権のとき、野中広務さんと沖縄問題について話し合ったことがある。野中さんはほとんどの島を回って住民と酒を酌み交わし、謝罪をした。だが、安倍政権は翁長(雄志)前知事が東京に何度も来たのに約4カ月間、会いもしなかった。

橋下:野党が弱いので安倍政権は余裕です。野党が弱い原因は、有権者から強力な支持を集めることができる提案を政治批評が行っていないことと、その結果、野党が自分たちの持論に凝り固まってしまっていることです。

田原:だから橋下さんの政権奪取論に関心がある。

橋下:野党を強くするために、(より有力な候補者を選ぶための)野党間での予備選の実施くらいはメディアが焚きつけないと。野党は党がまたがっているから党員投票できないって言うんですけど、世論調査を活用すればいい。白日の下に公開討論しながら、有権者が「この党がいい」と意思表示し、それを繰り返せば、他の野党も世論を見ながら持論に修正をかけます。そうすることで野党間の政策が収れんし、徐々に一つにまとまってくるはずです。何よりも日本初の予備選というものは、メディアと有権者の関心を引く。

田原:野党にそんなことをする気があるかなあ。

橋下:背中を押すのが政治批評の力じゃないですか。

田原:夏の参院選では候補者を一本化する必要は?

橋下:政権選択になるのは衆議院総選挙です。そこでどうやって野党候補を一本化するかが重要です。参院選は衆院総選挙の予行演習です。野党間予備選くらいのことができない野党に、日本の大改革などできるわけがない。

田原:でも、参院で逆転すれば、相当の緊張感が生まれておもしろくなる。

橋下:予備選も実行できない今の野党の状況だったら、まず無理です。

田原:橋下さんは出馬しないの?

橋下:僕が出るわけないじゃないですか(笑)。国会議員の中で仲間を増やすなんてできない性格です。

田原:この席で言いっこないよね(笑)。

橋下:僕は、今日のような議論をするから遠心力が働いて、人がどんどん離れていくんです(笑)。それにいろんなこと言われるのはもう嫌ですもん。無理。田原さんこそ、人生最後の締めくくりにどうですか?

田原:僕は権力の世界には絶対入らない!

橋下:それは逃げですよ。

田原:逃げでいい。権力の世界は勝つか負けるか、織田信長の時代から同じ。僕はそれが好きじゃないの。

橋下:いや、好き嫌いじゃなくて、日本を変えるためにぜひ、日本のマハティールになってくださいよ(笑)。

(本誌・秦正理、田中将介、緒方麦)

週刊朝日  2019年2月8日号より抜粋