「飲むことがラグビーの文化」と言葉で言われたときは、ピンとこなかった。ただ飲む理由がほしいだけでは? そんなふうにも思っていたが、会場に足を運んでその雰囲気に触れ、人々に話を聞くうちに、見えてきたものがある。ラグビーにおいては、プレーする側はもちろん、見る側にとっても、コミュニケーションとノーサイドの精神が、何より大切なのではないか。だからこそ、敵も味方も関係なく共に飲むという文化が生まれた。試合だけではなく、その文化も楽しんで初めて、真にラグビーという競技を楽しむことができるのではないか。前出のウィラー氏が、こんな話をしてくれた。

「日本といえば、忘れられない幸せな思い出がある。1971年に、代表戦のために日本に遠征したんだが、試合後、イングランド代表3人と日本代表3人とで飲んだんだ。囲炉裏を囲んで、床に座ってね。我々は日本語を話せないし、彼らは英語が話せない。ただただ互いにビールを飲みあった。50年近く前のことだけど、よく覚えているよ。それがラグビーさ!」

 言葉など必要ない。いや、互いを敬い、受け入れる気持ちがあれば、おそらくビールも必要ないのだろう。

 今年9月には世界各国のラグビーファンが日本各地にやってくる。まずは近くの試合会場に足を運び、歓迎の声をかけるところから始めてみてはどうだろう。

(本誌・伏見美雪)

週刊朝日  2019年1月25日号に加筆