ニューヨークタイムズ紙に批判された日清食品のアニメ広告(撮影・緒方麦)
ニューヨークタイムズ紙に批判された日清食品のアニメ広告(撮影・緒方麦)

 応援の気持ちを込めた動画が、まさか世界の批判の的になるなんて――。

 日清食品のカップヌードルのアニメ広告動画で、大坂なおみ選手の肌の色が実際よりも白く表現されていると議論を巻き起こした問題。四大大会に挑む大坂選手を応援するねらいで作った動画だが、同社は23日、大坂選手のマネジメント会社の米IMG社から要請を受け、該当する動画2本の公開を取りやめた。

 本件は海外メディアが敏感に反応した。米紙ニューヨーク・タイムズの取材に対し、日清食品は「『ホワイトウォッシュ』の意図はなかった」として、社会的な混乱と不快感を招いたことをメールで謝罪したという。

「当社が目的としていた『応援したい』という気持ちが伝わらずに混乱を招き、社会の中で議論となっている状況、大坂選手のアスリート活動への影響を鑑みて、動画を削除しました。今後も多様性を尊重し、さらに慎重に検討して広告宣伝活動を進めるようにしていきたい」(広報担当者)

 ハイチ系アメリカ人の父と、日本人の母の間に生まれた大坂選手。マーケティングコンサルタントの西川りゅうじん氏は、次のように話す。

「日本人の多くは『大坂選手には雑音に惑わされず、プレーしてほしい。日清食品に悪意はなく、そこまで目くじら立てなくても』という気持ちだっただろう。ただ、日本は島国で、同質性の高い社会。欧米先進国と比べ、人種や肌の色に関して意識が鈍感であるのは否めません」

 日本人は両親のルーツが異なる場合、「ハーフ」と呼ぶが、単語の意味は「半分」。「半人前」と、ネガティブにとらえられることもある。英語圏では「バイレイシャル(二つの人種からなること)」を使うのが一般的だという。日常的に使う言葉にも、感覚や意識の違いが表れている。

 国内のみならず、海外メディアの批判も集まり、日清食品はさぞ驚いただろう。だが、簡単に情報共有ができる今日のネット社会では、センシティブな問題と無縁ではいられない。

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大坂は世界ランク1位に