書店に数多く並ぶエンディングノート (c)朝日新聞社
書店に数多く並ぶエンディングノート (c)朝日新聞社
死後事務委任契約の例 (週刊朝日 2019年2月1日号より)
死後事務委任契約の例 (週刊朝日 2019年2月1日号より)
生前にできる、死後の手続き10の備え (週刊朝日 2019年2月1日号より)
生前にできる、死後の手続き10の備え (週刊朝日 2019年2月1日号より)

「気がついたら、自分の老後や死後を託す人が周りにいない。そんな状況はだれにも起こりえます」

【表で見る】行政書士などへの報酬や生前にできる死後の手続きの備え

『ひとり終活』(小学館新書)などの著書がある、シニア生活文化研究所の小谷みどり所長は、こう語る。

 生涯シングルを貫く、子どもがいない、親族と交流がなく疎遠、熟年離婚した……。身寄りのない“おひとりさま”が増える要因は様々だ。死後の備えは、どうすればよいだろうか。

 支える制度がいくつかある。

 例えば、死亡届提出、葬儀や納骨の手続き代行、遺品整理、SNSのアカウント削除などを頼む死後事務委任契約。当事者間の私的契約で、頼む相手(受任者)は友人や知人、行政書士ら。信頼できると思う人を選び、トラブル回避のために公正証書で法的な契約を結ぶほうが望ましい。

 生前から結べる契約として、ひとりで過ごす自分を見守ってもらう「見守り契約」、足腰や視力が衰えた際に備えて財産管理や必要な手続きを頼む「任意代理契約」、認知症になり判断能力が衰えた場合の財産管理などを頼む「任意後見契約」がある。契約の相手は友人や弁護士、行政書士、司法書士などになる。

 家族や親族に頼んでも構わない。だれにお願いするにしても、自分が何をしてほしいかを元気なうちにしっかりと伝えられ、確実に実行してくれる人が望ましい。任意代理契約と任意後見契約を家族以外に頼む場合、両方を公正証書で一緒に結ぶのが一般的だ。

 身寄りのないお年寄りが増えるなか、自治体も終活支援に乗り出している。

 神奈川県横須賀市は15年から、「エンディングプラン・サポート事業」を始めた。

 ひとり暮らしで身寄りがなく、月収18万円以下などの条件を満たす市民を対象にした登録制度。市役所の職員らが、葬儀や墓、延命治療の意思などを本人から事前に聞いて書面に残し、葬儀社と生前契約を結ぶ。

 具体的な内容は違うものの、同様の支援は神奈川県大和市・綾瀬市、愛知県北名古屋市、兵庫県高砂市、千葉市など全国に広がる。

 横須賀市は18年5月から、おひとりさまだけでなく自分の死後に不安を抱く全市民を対象に、「終活情報登録(わたしの終活登録)」を始めている。

 今は元気でも自分の意思を伝えられなくなるときに備え、緊急連絡先や遺言書・エンディングノートの保管場所、墓の所在地などを市に登録するしくみだ。

 国立社会保障・人口問題研究所の18年推計によると、65歳以上男性の独居率は15年の14%から40年に20.8%になる見込み。女性は21.8%から24.5%へ。高齢男性の5人に1人、女性の4人に1人がひとり暮らしとなる。

 考えたくはないが、いつかは考えるべき死後の手続き。身寄りがあれば遺族が困らぬように、おひとりさまならば周囲の人が困らぬように、必要なことを考えておきたい。(及川知晃)

週刊朝日  2019年2月1日号