【文豪の湯宿】尾崎一雄が格安で宿泊 作品にも登場する上高地のホテル 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

AERA dot.

【文豪の湯宿】尾崎一雄が格安で宿泊 作品にも登場する上高地のホテル

このエントリーをはてなブックマークに追加
鈴木裕也週刊朝日
【上高地温泉ホテル】
尾崎が最後に宿泊したのは昭和47年。現在は青柳優の甥の息子が宿を継いでいる

【上高地温泉ホテル】
尾崎が最後に宿泊したのは昭和47年。現在は青柳優の甥の息子が宿を継いでいる

焼岳を一望できる源泉かけ流しの露天風呂。毎年11月中旬から4月下旬まで、ホテルは冬季休業中だが、ここから眺める新雪を尾崎は美しいと評している/【上高地温泉ホテル】長野県松本市安曇上高地4469-1

焼岳を一望できる源泉かけ流しの露天風呂。毎年11月中旬から4月下旬まで、ホテルは冬季休業中だが、ここから眺める新雪を尾崎は美しいと評している/【上高地温泉ホテル】長野県松本市安曇上高地4469-1

 文豪たちの作品に登場する温泉宿を訪ねる連載「文豪の湯宿」。今回は「尾崎一雄」の「上高地温泉ホテル」(長野県・上高地温泉)だ。

【「上高地温泉ホテル」の露天風呂の写真はこちら】

*  *  *
 昭和12年に「暢気眼鏡」で芥川賞を受賞した私小説の名手・尾崎一雄は、翌年から3年間、秋になると友人の評論家・青柳優が支配人を務めていた上高地温泉ホテルに1カ月ほど宿泊した。夏の登山シーズンが終わった手すきの時期に居候価格でのんびり過ごすのが狙いだった。

<上高地を根城に山歩きをするといふのではなく、女でも行ける燒岳へ登っただけで、あとは河童橋から明神池のあたりへの散歩ぐらゐしかしなかった>(「あの日この日」下)

 昭和13年には、山の絵を描きに来た画家の安井曾太郎夫妻と同宿する。ある日、夫人が槍ケ岳に登頂したと知った尾崎は、青柳の反対を押し切って穂高山頂を目指す。荷物をポーター任せにして6時間かけて登り、山頂近くの小屋に1泊したが、翌朝は風雪。下山を余儀なくされた。

 この年、スタッフたちが冬季休業を迎えるために下山する前日、「別れの宴」を催してくれた。安井夫妻も参加した酒盛りで、尾崎は客側を代表して歌を披露したという。

 そんな宿泊中の出来事を題材に「穂高の新雪」「上高地行」など、多くの随筆や短編を物している。(文/本誌・鈴木裕也)

■上高地温泉ホテル(かみこうちおんせんほてる)
長野県松本市安曇上高地4469-1

週刊朝日  2019年2月1日号


トップにもどる 週刊朝日記事一覧

続きを読む

関連記事関連記事

このエントリーをはてなブックマークに追加
あわせて読みたい あわせて読みたい