――女性の社会進出と歩調を合わせるようにあらゆることを成し遂げてきた芳村。この春、84歳になる。人生でやり残したこともあるが、3年前に大きな病気をしてから、考え方が大きく変わったという。

 海外に移住して勉強するのが、ずっと夢でした。できれば3年、最低でも1年。場所はどこでもよかったんだけど、やっぱり身近なのはニューヨークやロサンゼルスかしら。

 社会学や女性学を勉強したかった。まだウーマンリブの前で、アメリカではそういう学問が盛んでしたからね。ただ、仕事も家庭もあるし。そこが心残りね。

 この歳だと、死について考えることもあります。自然にくるものというイメージかな。生きることの中に死ぬこともある、って感じかしら。

 私は前世や来世というものは、たぶんあると思っています。私の中の蓄積は、この八十何年分かではない。覚えていなくても、今の私も、別の世界で学んだことが生かされていたり、支えられたりしているはず。流れはこれからも続く。まだ一度も死んだことないからわからないけど、死んだ途端にいろんなことに気がつきそうな予感がしているの。

(聞き手/石原壮一郎)

週刊朝日  2019年2月1日号