林:ジャズの人ってカッコいいですよね。歌の途中でおしゃべりしたり、ピアノにもたれかかったり。

ジュディ:リラックスしてますよね。ジャズというもの自体が自由なんですよ。メロディーはあるんですけど、それを少し遅らせたり、自分の好きなフシを少し入れたり、「ここだけは好きにさせてよ」「オッケー」みたいなのがジャズなんです。だから私もお客さんと自由に話して、楽しくやらせていただきます。

林:あの「魅せられて」のジュディさんとはまた違うわけですね。

ジュディ:うふふ。あのころは白いドレスを着て、「カスミを食べて生きているような雰囲気でいろ」ってプロデューサーに言われてましたけど、今は普通の人間です(笑)。

林:あれが200万枚でしたっけ。爆発的なヒットでしたよね。

ジュディ:そうですね。あのころは商店街にスピーカーがあって、有線でいつも曲が流れていて、そこを通る人は老若男女みんなが聴いてましたからね。そういう環境って、今はないですもんね。

林:音楽を取り巻く状況も、ずいぶん変わりましたよね。このごろ70年代80年代のヒット曲をやる番組がとても増えたような気がしますけど、しみじみ「いい歌ばっかりだったな」と思いますよ。

ジュディ:団塊の世代の人たちがリタイアして、お茶の間に座れるようになったんでしょうね。あの時代は歌詞をつくる人がいて、作曲する人がいて、編曲する人がいて、それぞれの分野に分かれていた。だからこそ心に残るきれいな曲がありました。

林:それにしても、「魅せられて」ってすごく難しい歌ですよね。

ジュディ:ほんとに難しいです。今も難しいと思います。

林:カラオケで歌ってる人がいますけど、出だし、大体みんな遅れてますよね(笑)。

ジュディ:アハハハ。気を抜くと出遅れちゃうんです。それでうまくいってるなと思うと音痴になるんです。だからもう何万回と歌ってるけど、今でも自分の声に酔いしれることなく、緊張感をもってあの歌に向かうという感じですね。

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