きちんと歯周病の治療をすると炎症物質の血中濃度が下がり、血糖のコントロール状態を示すヘモグロビンA1c(HbA1c)の値が改善することも明らかです。

 こうした背景から、近年は医師と歯科医師が連携して患者さんを診るケースが増えています。糖尿病の専門医で、『糖尿病がイヤなら歯を磨きなさい』(幻冬舎)などの著書がある西田亙医師は、内科的な治療をしても血糖値がなかなか下がらない場合は歯科を受診することをすすめているそうです。

 なお、歯周病菌が引き金となって起こるからだの病気には、ほかに「狭心症・心筋梗塞」「関節リウマチ」「早産・低体重児」などがあります(下記参照)。

■歯周病に関係する主なからだの病気

[狭心症・心筋梗塞]
重度の歯周病にかかっている人は、狭心症や心筋梗塞の発生率がそうでない人の約2倍も高いことが明らかになっています。アテローム性動脈硬化症(動脈の内膜にコレステロールなどの脂肪がどろどろの粥状になって、肥厚し、動脈を狭くするタイプの動脈硬化)の患者さんの血管内から、歯周病菌が見つかったことが多数報告されています。歯周病菌が歯ぐきの血管を通じて動脈に入りこみ、直接、影響を与えているほか、炎症の起きた歯周組織から出てくる炎症性のサイトカイン(炎症によって出てくるたんぱく質の一種)等も引き金になっているといわれています。

[関節リウマチ]
 関節リウマチは自分自身の細胞や組織を攻撃する自己抗体がたくさん出てしまう病気です。関節リウマチに関係するある種の自己抗体(ACPA)の産生には歯周病菌がかかわっており、これが関節リウマチの発症に関与しているのではないかと考えられています。

[早産・低体重児]
妊娠している女性が重度の歯周病を発症していると、早産や低体重児の危険性が高くなることが指摘されています。口の中の歯周病菌が血管から胎盤を通して胎児に感染するのではないかと考えられています。また早産については、歯周組織で作られるプロスタグランジンなどの炎症性物質(子宮を収縮させる働きがある)が子宮内に増加することで引き起こされることが指摘されています。早産や低体重児のリスクは歯周病を発症していない人の7倍にものぼるといわれ、たばこやアルコール、高齢出産などよりも高い数字です。
 

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