山田昌弘・中央大学教授
山田昌弘・中央大学教授
(週刊朝日 2019年2月1日号より)
(週刊朝日 2019年2月1日号より)

 平成は結婚子育てを巡る状況も変わった。お見合いで誰もが結婚でき、妻は子育てに専念する昭和の「家族」は崩壊した。

【グラフ】50歳までに一度も結婚したことがない「生涯未婚率」の推移がこちら

 朝日新聞が1月13日付朝刊で報じた世論調査によると、結婚は「できるだけするべきだ」という人は48%。12年調査の59%から大きく減っている。「必ずしもしなくてもよい」は50%に達した。

 結婚するのが当たり前だという価値観は弱まり、「おひとりさま」が当たり前になった。パラサイト・シングルの名付け親で家族社会学の専門家、山田昌弘・中央大学教授は、背景に格差拡大があると指摘する。

「日本の社会保障制度と労働慣行は、昭和の家族を標準的なモデルにしています。正社員の夫が、専業主婦の妻と子どもを養うような標準モデルから外れると、一気に貧困のリスクが高まります。戦後の日本は年功序列型賃金や終身雇用が用意され、『一億総中流』といわれた格差のない社会でした。しかし、バブルが崩壊してグローバル化の波が来ると、低収入の人が目立ち始めました。いまでも増え続ける非正規雇用のような不安定な働き方で、結婚や子育てをあきらめざるを得ない人が出てきたのです。階層で分断された社会になり、システムに守られた人と守られない人の格差ができたのです」

 50歳まで一度も結婚したことがない「生涯未婚率」の推移をみると、過去最高を更新した15年は男性で4人に1人、女性で7人に1人になっている。未婚者が増加し、高齢化がさらに進むこれからの時代はどうなるのか。

「若者の4分の1は一生結婚しません。以前、結婚せず年金も払っていないフリーターが言っていました。『いまの生活が苦しいのに高齢になってからの生活に備えるなんてできない』。国民年金の保険料を払っていても満額で月6万5千円しかない。生活保護を受ければ、年金があろうがなかろうが月に約12万円もらえます。家庭や家を持つといったことをすべてあきらめてしまえば、生活保護のほうが得だという考え方もあるのです」

 結婚した人でも3分の1は離婚する傾向にある。再婚する人もいるが、「おひとりさま」は増え続けそうだ。

「20年後には3分の1が高齢者になります。いまの高齢者は一人暮らしでも、別居の家族がいる人は多い。配偶者も子どももいないまま高齢になる人が増えていきます。誰にもみとられず亡くなる『孤独死』の時代が到来します」

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