これからの世界経済は個人情報を集積した企業に牛耳られると言われる。ネットでモノを買う際、見知らぬ相手にクレジットカード番号を教える人は少ないだろうが、アマゾンで買う際は教えるのにためらいがない。同社は不正をしないとの評価があるためだ。物品購入が増えて個人情報も集まり、個人に合った広告宣伝を展開し、顧客を取り込む。小売業界は優劣がつき、競争力格差が広がる。

 こうした情報集積競争で圧倒的に強いのが、米企業集団の「GAFA」(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)。ストップをかける可能性のあるのが中国だ。朝日新聞の昨年12月28日付朝刊「米中争覇 AI」にあったように、<中国の14億の人口は、AI開発では圧倒的に有利に働く。性能を高めるカギになるのはデータの数だ。顔認証や買い物、金融取引、治安活動まで、中国でAIはすでに様々な場面で使われており、膨大な情報が集まる。個人情報保護の規制の緩さと、自分の情報を使われることに敏感でない国情がそれを支えている>。

 出る杭を抑えたいトランプ大統領の心を考えると、米中貿易戦争はそう簡単に終わらないかもしれない。

週刊朝日  2019年2月1日号

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藤巻健史

藤巻健史

藤巻健史(ふじまき・たけし)/1950年、東京都生まれ。モルガン銀行東京支店長などを務めた。主な著書に「吹けば飛ぶよな日本経済」(朝日新聞出版)、新著「日銀破綻」(幻冬舎)も発売中

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