ミッツ・マングローブ「昭和と平成、紅と白、男と女」

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 ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は年末に行われた「紅白歌合戦」を取り上げる。

【写真】昨年末の紅白歌合戦で共演したユーミンとサザンオールスターズ

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 年明け一発目の原稿ですが、先の紅白における『サザンとユーミンそしてサブちゃん』の興奮を認(したた)めるには、いささか時間が経ち過ぎて、今さら何を書いても後出しジャンケンになる感は否めません。強いて言うなら平成最後の紅白は、茅ケ崎(サザン)が八王子(ユーミンとサブちゃん)を呼び込むという、極めて『横浜線~相模線』色の濃いものとなりました。

 荒井由実時代の楽曲『天気雨』では、相模線に乗って八王子から茅ケ崎のサーフショップへ男を追いかける情景を歌っていたユーミン。あれから40年以上の時を経て、ユーミンの茅ケ崎への旅もようやく完結したような、もしくは昔から茅ケ崎界隈で語り草となっていた八王子の老舗呉服店の不良娘が、「湘南ボーイって言葉を浸透させたのはこのアタシだよ?」と言わんばかりに、平成の終わりに改めて焼きを入れに現れたといったところでしょうか。サブちゃんに至っては、はるばる北海道の小さな町から津軽海峡を渡り、やっと南下した先が何故か八王子だったわけで。そんなサブちゃんにしきりに「今何時?」と問いかけていた桑田さん。見様(みよう)によっては、湘南はおろか太平洋すら見たこともない老人が、茅ケ崎のパリピーに絡まれているようでもありました。いずれにせよ「平成最後と謳った割に昭和感が強過ぎ」と感じた人も少なくないようで、何かにつけ昭和にありがたみを見出し、事あるごとに「昭和が終わった……」と嘆き続けてきたのが平成だとすれば、そんな30年が終わろうとしてもなお、「昭和はまだまだ終わらねぇぞ!」という事実が立証された、そんな紅白だったのではないでしょうか。

 そして『おげんさん』こと星野源さんからは「これからは性別関係なく混合チームでいけばいい」といった紅白の根源を揺るがす提言が。解釈すれば『セクシャル・マイノリティ(性的少数者)』と呼ばれる人たちの存在を尊重した意義のある言葉です。おげんさんは何も間違っていません。しかしこれだけは言わせて。マジョリティと異なる性自認・性的指向の人たちを、良かれと思って『男にも女にも属さない人』としてしまう風潮は、実は非常に危険なのです。ほとんどのセクシャル・マイノリティたちも含め、人は必ず『男性』もしくは『女性』のどちらかに分類されるもの。ここだけは決して見誤ってはいけない。中にはまだ自分が男か女か迷っている過程の人もいますが、戸籍上では男性と女性しかこの世には存在しません。例えば、女性が好きな男性も、男性が好きな男性も、女性の格好をするのが好きな男性も、女性として扱われたい男性も、女性として生まれたけれど性転換した男性も、いずれは女性になりたいと思っている男性も、皆『男性』すなわち白組です。真の多様性とは、紅・白以外の組を設けたり性別を関係なくするのではなく、様々な種類の紅組(女性)や白組(男性)の存在を認め合うことだと私は思います。セクシャル・マイノリティは別に男女の垣根を壊す存在でも、垣根をなくすための口実でもありません。

 私もよく冗談で「紅白に出るなら桃組?」などと言われたりしますが、異形を別枠に収めようとするのはただの排除です。この無自覚な履き違いを食い止めるためにも、紅白には『男女対抗』を貫いて頂きたいと願います。そして私は堂々と白組から出ます!

週刊朝日  2019年1月25日号

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