抗炎症作用を利用して、アトピーなどの皮膚疾患にステロイド外用剤が使用されます。ステロイド外用剤は強さのランクが5段階にわ分かれています。このランク付けに使われているのが、血管をどれくらい収縮させるか(収縮能)です。血管収縮作用が、治療効果と相関しているためランク分けの基準として使われています。

 もっとも強いステロイド薬が「デルモベート」。ハリー・ポッターに登場しそうなこの名前のお薬は1969年に開発され、1979年に発売されました。

 また、日本で一番有名なステロイド外用剤「リンデロンVG」。これはステロイドの中で上から3番目の強さのお薬です。余談ですが、「リンデロンVG」のGは抗生物質であるゲンタシンのGの略。抗生物質が含まれたステロイド外用剤です。日本ではこれまで、抗生剤が必要ない湿疹に対してもリンデロンVGが使われてきました。このため、皮膚の細菌感染症である伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん、別名を飛び火)は、ゲンタシンが効かないタイプの菌がほとんどになりました。

 このように、抗生剤の乱用は耐性菌を増やすことになります。安易な「リンデロンVG」の使用には注意が必要です。さらに、リンデロンVGによるかぶれの副作用も報告されています。

 一言でステロイドといっても、たくさんのステロイドホルモンが存在します。病院で処方されるステロイドと筋肉増強剤のステロイドは全く違うものです。病気やお薬をなんとなくのイメージではなく、一つ一つ丁寧に理解することは結果として自分の健康を守ることにつながります。というわけで、次回はステロイドの副作用について解説します。ステロイドの内服と外用で副作用が異なることは知っておいたほうがよい知識のひとつです。多くの方がステロイドの正しい知識を得ることで、不必要に怖がることがなくなりますように。

◯大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員を経て2017年より京都大学医学部特定准教授。皮膚科専門医。がん薬物治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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大塚篤司

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大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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