『アメリカ死にかけ物語』で作者が米国の破綻を饒舌に語る理由は?

週刊朝日

アメリカ死にかけ物語
リン・ディン,小澤身和子
978-4309227511
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 作家の古川日出男氏が選んだ“今週の一冊”は『アメリカ死にかけ物語』(リン・ディン著 小澤身和子訳 河出書房新社 3200円※税別)。

*  *  *
 アメリカ文化とは何か? それは「広告や楽曲、映画、テレビ番組が常に、あらゆる衝動的な行動を、美化したり、男らしいとか女らしいとか性別をつけて表現したりするような文化」であると著者リン・ディンはさっさと定義する。なるほど。異論がない。
 で、そのアメリカは、どうなっているのか?

 邦題によれば「死にかけ」ている。

 なるほど。

 などというように、このルポルタージュあるいは著者のアメリカ徘徊記は、圧倒的断言、圧倒的いらだち、圧倒的饒舌(と博識、史実の裏づけ)、さらには圧倒的余談とともに綴られる。いったい本書は、なんなのか。ルポルタージュまたは徘徊記、とひとまず書いたが、アメリカの都市都市をあちこち旅する著者は、正統派のジャーナリストやエッセイストの類ではない。それどころか正統派のアメリカ人でもない。正統派のアメリカ人?

「それは一体なんだ」との問いこそをまさに喚起させる本書の著者は、ベトナム系アメリカ人であり、詩人であり小説家であり、翻訳もし写真も撮り、つまり枠に収まらない。おまけに、本作の原著の上梓後、これは昨年の2月になるがアメリカの周縁に「追いやられ」て、結局母国のベトナムに暮らす「元アメリカ人になった」という。

 要するに著者ディンは、アメリカナイズされていない。

 だからこそ「アメリカの時代の終わり」をレポートできている。アメリカなんてとことん破綻しているぜ、と。時にその視座は、きっちりと巨視的になる。

<テロリズムとの戦いは最初から支離滅裂で、馬鹿げていた。CIAのスパイだったと言われるオサマ・ビン・ラディンを追跡することを口実に、アメリカはアフガニスタンを侵略し、何十年も支援してきたサダム・フセインを攻撃した>

 と書き──さっさと断言して──また、

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