※写真はイメージです (c)朝日新聞社
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 (週刊朝日 2019年1月18日号より)
 (週刊朝日 2019年1月18日号より)
 (週刊朝日 2019年1月18日号より)
 (週刊朝日 2019年1月18日号より)

 だるい、眠れない、疲れやすい、気分が沈みがち…。そんな 病気の手前「未病」のサインを見逃すな!! 健康診断やひととおりの人間ドックではわからない不調を発見する“未病検査”で長生きリスクに備えよう。今回は5つのテーマの検査の詳細と人間ドックのオプションの選び方を紹介する。

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■分子栄養学検査【栄養吸収の体のクセまでわかる】
「肌や髪のツヤ不足、痩せにくいなどの悩みは、実は栄養の過不足により増強している場合も。更年期のせいだと思っていた体調不良は、栄養過不足が原因ということも多いのです」

 と話すのは松倉クリニック&メディカルスパの田路めぐみ医師だ。検査は採血と採尿で、約70項目の検査データと問診から、細胞を構成する成分を詳細に分析する。自分に足りない栄養素、過剰な栄養素、そして栄養をとる上での悪い習慣などがわかるという。

「検査によって、食事のとり方のクセだけでなく、同じ物を食べても栄養を吸収しやすいといった体のクセ、いわば体質も詳細にわかります。体の成績表を出してみるつもりで、一度検査してみて」(田路医師)

■遺伝子検査【生活習慣病からがんまでリスクを把握】
 がんや糖尿病、アルツハイマー型認知症、脳梗塞、関節リウマチなど83の疾患と、アルコール分解酵素や食塩感受性高血圧、ニコチン依存症など五つの体質、そして個々の遺伝的背景による薬剤の薬理効果と副作用に関する薬剤応答性がわかり、病気のリスク削減や健康対策に大きく役立つという。血液または唾液を採取して解析し、約3~4カ月後に結果が出る。

「技術の進歩によって遺伝子の全体像が明らかになり、病気に深く関係する遺伝子が特定できるようになってきました。遺伝的要因がわかれば、食事や運動など環境要因からリスクを減らすことができる。リスクがわかれば早期発見にもつながります。高額ですが、人生に一度受ければ十分。結果によっては、過度に心配しなくてよいこともわかります」(小林メディカルクリニック東京院長・小林暁子医師)

■女性ホルモンドック【数値でわかるメリット大】
 45歳から55歳までの間は、多くの女性が女性ホルモンの減少による更年期障害に悩まされる。

「女性ホルモンは、心、体、骨、脳にまで影響を及ぼします。粘膜や皮膚の乾燥など見た目の変化を引き起こすほか、骨密度や血管の弾力、脳細胞にも影響を及ぼすため、ホルモン減少が高血圧や心臓発作など重大な疾患につながる例もあります」(小山嵩夫クリニック院長・小山嵩夫医師)

 よくある例が、うつ症状がある更年期の女性が、女性ホルモン値を測る前に精神科へ通院し、投薬治療を始めてしまうパターン。女性ホルモンの減少によって引き起こされるうつ症状だった場合、投薬治療の影響がおさまるまではホルモンを補充する治療に効果がないことがわかっている。自分のホルモン量を数値で知ることのメリットは大きい。

「閉経前後10年は、自覚症状がなくても心身に何らかの不調が表れます。治療は塗り薬、貼り薬などによるホルモン補充療法が一般的。これにより、女性ホルモン値を一定値まで戻すことができ、不調を和らげることができます」(同)

 女性ホルモンドックでは、血液検診を始め、婦人科検診、乳房超音波、動脈硬化指数、筋肉量、水分量、生活習慣のチェック、骨密度、毛髪検査などがセットになっている。

 同様の検査は「からだエイジングドック」(ウィメンズヘルスクリニック東京)などの名前でも行われている。

「血管、骨、ホルモンなどに表れる老化や疾病の兆候を知ることで、自分の体の弱点、優先的にケアするところが把握できます」(浜中医師)

■眼科ドック【目のかすみや疲れ目も治療へ】
 緑内障や網膜色素変性、糖尿病網膜症などは初期に自覚症状がない。気付いたときには深刻化しているケースが珍しくなく、放っておくと視野が欠けたり、失明したりする恐れもある。

「中高年の多くが感じやすい、疲れ目、かすみ、乾きなどの症状も、原因がわかれば治療ができることが多い。40歳を過ぎたら、年に1回は眼科ドックを受けて、早期発見につなげてほしい」(南青山アイクリニック東京院長・戸田郁子医師)

■尿流量・残尿測定検査【排尿トラブルの背景探る】
 加齢とともに膀胱の容量が小さくなり、頻尿気味になるのは男女共通。80歳を超えると、夜間頻尿は睡眠不足はもちろん、転倒のリスクも大きくなる。頻尿や尿失禁の原因は、膀胱が過敏になって急な尿意を覚えてしまう過活動膀胱や感染による膀胱炎などさまざま。

「過活動膀胱の症状は、(1)尿意切迫感(がまんできないような尿意を感じること)、(2)日中および夜間の頻尿(頻繁に排尿したくなること)、(3)切迫性尿失禁(排尿をがまんできずに尿を漏らすこと)で、うち少なくとも(1)と(2)の症状があって、ほかに原因となり得る膀胱炎などの病気がない場合に過活動膀胱と診断されます」(きつかわクリニック院長・吉川慎一医師)

 思い当たる人は尿流量・残尿測定検査で、尿の勢い、1回の排尿量、排尿時間、排尿後の残尿量などを一度調べてみると良い。

「過活動膀胱の最大の原因は、排尿をコントロールしている自律神経系機能の加齢による衰え。一方で、頻尿や尿漏れの原因が、水分の過剰摂取によることも少なくない。近年、ドロドロ血液の予防として水分をたくさんとる人が増えていますが、体の水分が十分あるときに水を飲んでも、それは尿になるだけ。過剰摂取の場合は、摂取する水分を控えるだけで症状が改善します」(同)

 一方、血尿や膿尿などは命に関わる病気の危険信号だと思ったほうがいい。50歳以上の男性に多い膀胱がんは、初期症状は血尿だが、痛みもなく赤い尿が1~2回出て、その後はしばらく血尿が消失するため、放置されることが多い。だが次に血尿が出たときは症状が進行し、治療が難しいケースが少なくないという。

■人間ドックのオプション【賢く選んで未病チェック】
 人間ドックのオプション検査も賢く選べば、未病を調べるのに役立つ。オプション検査は全員に必要ではないが、特定の性別や年代によっては行うべきものがあるからだ。

大腸がんは、加齢とともに増える傾向にあります。60歳以降で今までに検査したことがなければ、一度大腸がんドックを。また特に女性は閉経後から骨密度が減り始め、年齢とともに悪くなっていくので、骨粗鬆症ドックを受けても良いでしょう」(三井記念病院総合健診センター長・石坂裕子医師)

 脳ドック、肺ドックなどは、家族にそれらの病気になった人がいる場合や、症状に疑いを感じた人は受けると良い。また、優先的に受けるべき検査を選ぶために、「がんリスクスクリーニング検査」で、部位別にがんリスクを予測するといった検査の使い方もある。
「個人の状態に合わせて医師から助言してもらうといいでしょう。だからこそ、ドックは継続的に受診し、より良いアドバイスを受けられる施設を選んで。長期にわたって自分の体の変化を見てくれる医師の意見は貴重です」(同)

 その未病を本当の病気にしないためにも、年の初めに自分の体の状態を一度チェックしてみては。(本誌・松岡かすみ)

週刊朝日  2019年1月18日号より抜粋

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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