引退会見で今後の活動について答える吉田沙保里(撮影・大塚淳史)
引退会見で今後の活動について答える吉田沙保里(撮影・大塚淳史)

 現役引退を表明した女子レスリングの吉田沙保里(36)。1月10日に東京都内で開かれた会見には、200人以上の記者やカメラマンが殺到した。注目が集まったのは、今後の身の振り方だ。

 指導者かタレントか、会見でも質問が出た。吉田は母校・至学館大学(旧・中京女子大学)や、日本代表で指導は行なっていたが、指導者の道については次のように謙虚に語った。

「コーチもたくさんいますので、その中で精神的な支えをできたらいい。(日本代表のコーチは)続けていきます。コーチとして、私は経験が全然ない。今まで頑張ってこられたコーチもいますので、迷惑をかけないように協力できればと思っています」

 選手としては輝かしい実績を残した吉田だが、天才は指導者に向かないというのが通説。その資質について、吉田を高校生の時から約20年に渡って取材し続けているスポーツライターの宮崎俊哉さんはこう見る。

「これからどう勉強していくかですね。吉田さんのスタイルは独特です。お父さんから『タックルを制するものは世界を制する』と指導され、ノーモーションの高速タックルを吉田さんにたたき込んだ。あれを本当に教えていくのか、あれができない人にはどういう教え方をするのか。指導者としての引き出しを増やしていく必要がある」

 また、プレースタイルを教える以上にコーチや監督として重要なのが選手に寄り添う姿勢。その点、吉田の性格は指導者に向いているという。

「皆から慕われるとか、気配がりできる面で指導者として申し分ないと思います。海外試合で、“世界の吉田”がセコンドにつく影響は大きいと思います。自分自身の経験を選手にその場で伝えられますし、相手からすれば嫌でしょうね」

 一方で、タレントとしての行く末はどうなのだろうか。リオ五輪後はバラエティー番組やCM、イベントに頻繁に出演するなど、タレント活動も増えていた。何より、会見では本人がバラエティー番組への出演には前のめりぎみだった。

「結構バラエティーが好きで、テレビにも出させていただいているんですけど、お笑いというか、とにかく笑って、笑顔でいることが好き。(スポーツ)キャスターよりバラエティーの方が向いているのかなと自分では思っています。でも、いろんなことに挑戦できればと思っています」

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タレントとしての真価が問われそうなのは