あいみょんとの「泣き出しそうだよ feat.あいみょん」は、ピアノをフィーチャーしたバラード。別れた恋人を思い続けている切ない追憶をテーマにしている。野田の伸びやかな歌と、あいみょんの素直で率直な歌が合っている。

 ニューヨーク在住のラッパーのMiyachiとSOIL & “PIMP”SESSIONSのタブゾンビを迎えた「TIE TONGUE feat.Miyachi,Tabu Zombie」ではタブゾンビのトランペットが鮮烈だ。

「Mountain Top」では、野田が『君の名は。』以来魅せられたというストリングス、オーケストレーションを採り入れている。

「万歳千唱」と「正解(18FES ver.)」は、NHKが昨秋に放送したテレビ番組『RADWIMPS 18祭』のために書き下ろした。

 前者は、17~19歳の“18歳世代”の1千人と一回限りのステージを作り上げるという趣旨にちなんで“三唱”でなく“千唱”としたのだろう。アイリッシュ・テイストを織り込んだマーチ風の演奏をバックに歌われる。

 後者は、番組で収録された音源をそのまま収録。合唱曲が書きたかったという願いがかなったという。“答え”がある問いばかりを教わってきた学校生活を葬り、“僕だけの正解をいざ 探しにゆくんだ”“制限時間は あなたのこれからの人生”“採点基準は あなたのこれからの人生”と歌われ、“よーい、はじめ”と、新たな旅立ちを告げる言葉で締めくくられている。

 本作に収められたコラボ曲、映画提供曲、合唱曲などは、いずれも以前の彼らにはなかった試みであり、成果をもたらしている。

 昨年の横浜アリーナ公演を収録した映像作品『Road to Catharsis Tour 2018』も発売中。「ます。」「おしゃかさま」「棒人間」といった旧曲が目立つ中で、注目すべきは本アルバムに収録されなかった「HINOMARU」だ。“戦争を想起させる”などと批判され、物議を醸した曲だ。演奏に先立ち、野田が真意を説明している。アメリカで暮らしていたころに目の当たりにした自国を愛し、誇りに思う姿勢に触発されたことが同曲を書くきっかけだったと明かしている。生まれた国を愛するという率直な思いながら、“御霊”などといった歌詞がうさん臭さを伴う“愛国歌”と見なされて批判を被ったわけだ。ともあれ、見逃せない映像作品だ。(音楽評論家・小倉エージ)

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小倉エージ

小倉エージ

小倉エージ(おぐら・えーじ)/1946年、神戸市生まれ。音楽評論家。洋邦問わずポピュラーミュージックに詳しい。69年URCレコードに勤務。音楽雑誌「ニュー・ミュージック・マガジン(現・ミュージックマガジン)」の創刊にも携わった。文化庁の芸術祭、芸術選奨の審査員を担当

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