「朝起きて今日もやることが何もない。ですが誘いがあれば月に1度くらいのゴルフには出かけます。もう100が切れませんが。ゴルフをしても、ボールがどこへ飛んでいったかもわからない」

 今は、自宅近くのカフェまでの1キロ近くの散歩や、孫との交流しか、これといってやることがない。再就職をする気もないという。まだ70代。血圧が少し高いぐらいで、いたって健康で、華々しいキャリアもある。残りの人生でもう一花咲かせようという気にはならないかと尋ねると、村田さんはこう話す。

「ならないですね。子どもたちも巣立ち、あとは妻と僕が、逝くまでの時間をどうするか。人生は『逝くまでの暇つぶし』です」

 平日の図書館やスーパーなどの憩いの場にぼんやり座っているシニアもいる。

 少し前まで行く場所があり、求められていたに違いない。博報堂「新しい大人文化研究所」の阪本節郎さんによると、現在75歳以上の人たちは、「50も過ぎれば人生下降線、みながおとなしく余生を過ごすのが当たり前という時代」を生きてきた、いわゆる「従来型高齢者」。

「これからは違う。ここで終わるどころか、やっと自分の人生がやってきた、これからは自分らしくありたいが始まっているんです」

(本誌・大崎百紀)

週刊朝日  2019年1月18日号より抜粋