「デジタル技術について、『うちの会社には関係ない』と考えている経営者が少なくありません。IT関連の業務やシステムは外部に丸投げすればいいという姿勢です。これは間違いで、第4次産業革命はすべての産業に影響がおよぶものなのです」(同)

 日本企業に大きなチャンスをもたらすのがIoT。ネットを通じモノ同士の情報をやり取りする。温度や振動、電流といったさまざまなデータがあり、センサーなど電子製品の技術力が勝負を決める。日本が得意とするモノづくりの領域だ。

「IoT市場は年平均15%、10年間で2倍の成長が期待できます。IoTの分野には言語障壁がありません。グーグルやフェイスブックなど、『プラットフォーマー』と呼ばれる巨大IT企業が日本から現れないのは、技術力がなかったためではなく、言語が壁になっている面が大きかった」(同)

 IoTを重視して、次の成長の柱に位置づける企業も現れている。建設機械メーカーのコマツは、建機にGPSやセンサーを取りつけ、位置や稼働時間、運転内容、燃料の残量などを遠隔管理するシステムを開発した。建機をつくり売って終わりというビジネスモデルを変え、効率的な運転方法や建設現場の管理・改善といった新たなサービスを提案しようとしている。その一環として、ショベルカーなどの無人運転技術も実験中だ。

 トヨタ自動車は昨年6月、フルモデルチェンジした高級車「クラウン」と新型車「カローラスポーツ」を発売した。両方とも通信機を標準装備し、運転者はネットワークを通じてさまざまなサービスを受けられる。コマツと同様に車をつくって売るだけでなく、移動手段としてのサービス全体を手がけていく。

 トヨタはソフトバンクと共同で会社をつくり、企業向け配車サービスや自動運転の配送などを手がけると昨年10月に発表。トヨタの豊田章男社長は「車をつくる会社からモビリティーサービス会社に変わる」と意気込む。

 日本企業にとって20年から本格的に普及するとみられる次世代通信規格「5G」も追い風だ。現在の携帯通信技術「LTE」に比べて通信速度や接続機器数が100倍になり、通信の遅れは10分の1まで減る。

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