「稼ぐ力が強くなったのは、新しいビジネスモデルを確立したことが大きい。新しいビジネスモデルとは、『ナンバーワン』ではなく、『オンリーワン』をめざす戦略です。価格競争が起きないような製品や分野で技術と品質に磨きをかけ、持続的な力強さを手に入れたのです」(同)

 平成の前半までは、テレビやパソコン、携帯電話など多くの電気製品について、日本企業が世界市場で大きなシェアを占めていた。「メイド・イン・ジャパン」は高品質の象徴でもあった。

 その後、賃金が日本より安い韓国や台湾、中国勢が、巨大な工場をつくり競争を仕掛けてきた。シェアは奪われ、国内大手電機メーカーはテレビやパソコンなどの事業を、海外に切り売りせざるを得なかった。

 日本経済を支えてきた製造業の勢いは止まったようにも見えるが、実は消費者には見えにくい形でもうけるようになっている。最新の電気製品をつくるには、特殊なフィルムなどの素材や、電気を蓄えたり放出したりする高度な電子部品が必要。こうした分野で日本は圧倒的に強い。さらに電気製品や自動車などの製造装置をつくれるのは、昔も今も日本企業だ。

 アジアの海外メーカーは、日本製の素材や部品、製造装置がなければ生産が成り立たない。見かけ上は海外製であっても、中身は事実上日本製というものが、たくさんある。

 足元で世界経済を揺るがしている米中の貿易摩擦も、日本の株価にはむしろ有利に働くという。

 米中両国の対立は深刻で、かつての米ソのような「新冷戦」の時代になるともいわれる。互いに制裁関税をかけ合えば両国間の取引は減り、その分、日本との取引や結びつきが強くなる。いわば「漁夫の利」を狙えるのだ。

 うまくいけば、日本の重要性が意識されるようになる。経済だけでなく、政治の面でも、日本がキャスティングボートを握れるかもしれない。トランプ米大統領が日本との関係を重視し、中国の反日感情がここに来てやわらいでいることがその証拠だという。

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