【文豪の湯宿】“熱いぬる湯”? 新田次郎が楽しんだ微温湯温泉の宿

鈴木裕也週刊朝日
「日本ぬる湯温泉番付」で東の横綱に選ばれるほど効能が高い/【旅館 二階堂】福島市桜本温湯11
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「日本ぬる湯温泉番付」で東の横綱に選...

 文豪たちの作品に登場する温泉宿を訪ねる連載「文豪の湯宿」。今回は「新田次郎」の「旅館 二階堂」(福島県・微温湯[ぬるゆ]温泉)だ。

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 作家になる前に中央気象台(現気象庁)で観測員をしていた新田次郎は、仕事で多くの山を訪れた。昭和29年には、福島・山形県境の吾妻山、一切経山の調査のため、微温湯(ぬるゆ)温泉の旅館二階堂を拠点とした。

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<沢や尾根を横切る長い道がやがて、一本の山道に合した。(略)全く突然、前が開けて、菜の花が見えた。ほんの10坪ばかりの菜畑のとなりにかやぶき屋根が見えた。そこがぬる湯であった>(『山の歳時記』)

 微温湯とは字のごとく温度が低い温泉で、二階堂の湯はおよそ32度。元来、熱い湯が好きな新田次郎は我慢して10分ほど湯に浸かったが、耐えきれず部屋に引き揚げた。食後、主人に文句を言うと、「湯に含まれる化学成分が皮膚から浸透して身体に効く」と諭された。納得がいかないまま寝床に入ると、不思議なことに全身がぽかぽかしてきた。

 だが、翌朝以降は別の湯船に、新田専用のあつ湯が用意されていた。滞在中はその専用の沸かし湯を独り占めして“熱いぬる湯”を楽しんだ。

 山岳調査を終えて帰るころには、ここを桃源郷のようだと絶賛して、再訪を誓ったという。(文/本誌・鈴木裕也)

■旅館 二階堂(りょかん にかいどう)
福島市桜本温湯11

週刊朝日  2019年1月4日‐11日合併号

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