もう一つは、株などの有価証券と同様に、投資家に代わって保管・管理する機関「カストディアン」が存在すること。金融機関は自分では保管せず、管理する機関の役割が重要になる。これらの条件はそう遠からず実現すると思っている。



 短期的に価格が乱高下する仮想通貨だが、それでも私が注目する理由は3点ある。第1は円の信用が失墜したときに、避難通貨の役割を果たせるから。キプロス危機の際、仮想通貨は海外への送金手段に使われた。

 第2に、仮想通貨に使われるブロックチェーンの技術がネットの次の「革命」として期待できるから。ブロックチェーンは中央でシステムを管理する人がいない。特に(非常に多くの人が参加する)パブリック型ブロックチェーンは、仮想通貨を作り出す人(マイナー)に管理が任されている。マイニングで得る仮想通貨が管理料の代わりになる。ブロックチェーンが発展すれば、表裏の関係の仮想通貨も発展すると思う。

 第3点の理由は仮想通貨自身の将来の明るさ。銀行口座を持たない人は世界に20億人といわれる。近くに銀行がない、信用度が低いなど様々な理由はあろうが、彼らは現在、経済取引圏から除外されている。

 口座を持たず入金も出金もできない人が、スマホを持っていれば仮想通貨を使って世界の人々と経済取引できる。20億人が参加できる手段と考えれば、仮想通貨の未来は明るいと思う。

週刊朝日  2019年1月4‐11日合併号

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藤巻健史

藤巻健史

藤巻健史(ふじまき・たけし)/1950年、東京都生まれ。モルガン銀行東京支店長などを務めた。主な著書に「吹けば飛ぶよな日本経済」(朝日新聞出版)、新著「日銀破綻」(幻冬舎)も発売中

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