阪神入りが決まった西勇輝投手 (c)朝日新聞社
阪神入りが決まった西勇輝投手 (c)朝日新聞社

 今オフのストーブリーグは巨人の大型補強が目立つ。FAで広島から丸佳浩西武から炭谷銀仁朗の獲得に成功したほか、オリックスを自由契約になった中島宏之、元マリナーズの岩隈久志、パドレスから現役メジャーリーガーのビヤヌエバも新加入した。他球団の編成担当は「広島で攻守の軸だった丸を補強できたのは非常に大きいと思います。ただ岩隈は最近2年間で数試合しか投げていないので、先発でどれだけ投げられるのかは未知数です。炭谷を選択したFA戦略もどう出るかですね」と分析する。

 関係者の話によると、巨人はFA戦略で当時オリックスの西勇輝の獲得に狙いを定めていたという。だが、鹿取義隆GM兼編成本部長がリーグ優勝を逃した責任を取って今季限りで退任。3度目の就任となった原辰徳監督が編成権を握ると、西から炭谷に補強戦略を方針転換したという。西は巨人のエース・菅野智之を慕って4年連続自主トレを共に行うなど公私で親交が深い。「たられば」だが、巨人が獲得に乗り出していたら菅野の存在は大きなアドバンテージになっていたに違いない。

 投手陣は今季リーグトップのチーム防御率3.79だったが、不安はくすぶっている。先発で規定投球回数に到達したのは菅野と山口俊のみ。左腕エース・田口麗斗は2勝8敗、投球回も86回1/3にとどまるなど精彩を欠いた。今季頭角を現した今村信貴、メルセデスも1年を通して先発で投げぬいた経験はない。救援陣が不安定なため、イニングイーターの先発要員は貴重な存在だ。西は今季162回1/3を投げて10勝をマーク。28歳と脂の乗り切った時期で、最近5年間でも規定投球回数を4度クリアするなど先発の一角として十分に計算できる。

 それでもオリックスのエース格だった西ではなく、西武で3番手捕手だった炭谷の獲得に乗り出したのは捕手陣の強化が急務と考えたからだろう。今季は小林誠司、大城卓三、宇佐見真吾がマスクをかぶったが、経験不足は否めない。炭谷の加入で若手捕手たちの発奮材料にもなり、相乗効果の期待も高まる。西は同一リーグの宿敵・阪神が獲得した。果たして巨人のFA戦略が吉と出るか凶と出るか。炭谷の起用法も含めて新戦力をどう輝かせるか、名将・原監督の手腕が問われる。(今中洋介)